初任給
そうして、俺達は冒険者ギルドに戻ってきた。俺はうきうきとした気分で掲示板に向かって、サイクロプス討伐の依頼書を三枚剝がした。
俺は受付の列に並ぶと、受付嬢にサイクロプス討伐の依頼書を提出した。
「まだそんなに戦士の寵愛を受けていないでしょうから、ウルフとゴブリンは危なかったでしょう。普通、二週間くらいはスライムやラビットを狩りながら戦士の寵愛を授かるものだわ。後、サイクロプスは流石にやりすぎよ」
これを聞いたクーデリカがやっぱりといった顔をしている。ゆっくりできるかは分からないからレベルはあげておくに越したことはないぞ。
「いえ。優秀なパーティーだったので、ウルフとゴブリンも倒すことができましたよ。これらは、スライムとラビット、ウルフ、ゴブリンの討伐証明です。あと、偶然にもサイクロプスと遭遇したので、その報告をお願いします」
俺は三つ目玉の入った麻袋をカウンターに置いた。それからいった。
「偶然にも、サイクロプスと遭遇したため、これを討伐しました。討伐証明もありますのでお願いします」
それから、スライムとラビット、ウルフとゴブリンの討伐証明をどんと提出した。
受付嬢は慌ててギルド受付奥の鑑定部に声を掛けて討伐証明を回収させる。しばらくすると、鑑定部に呼ばれ、呆然として帰ってきた。
「あれだけ膨大な数をどうやって。それにサイクロプス三匹なんて。パーティーの内お三方は今日冒険者ギルドに登録されたんですよ」
受付嬢の顔は真っ白だ。今にも倒れそう。あんまり心配かけるのも悪いか。
俺は首下に隠しておいたミスリルプレートを受付嬢にだけ見えるようにする。
「私が指導に当たっていたので、当然のことです。それにサイクロプスの内、二匹は私が倒しましたから」
蒼白だった受付嬢の顔がミスリルプレートを興奮に顔が赤くなっている。俺は皆には秘密ということで、というジェスチャーを送った。
「それなら、納得ができます。三人は初心者冒険者として十分な依頼達成数をこなしました。中級冒険者に昇格です」
中級冒険者に昇級した3人は呆然としている。あまりに早い展開についていけてないのだろう。討伐数からしたら当然だと思うが。俺は3人にカッパープレートを渡すように促した。3人は現実味を帯びてないのかのろのろとした動きでプレートをカウンターに置いた。
周囲の冒険者たちがどよめいている。
「たった一日で昇格だと」「ありえない、俺たちは何か月かけたと」「いや、あのロイって坊主もなかなかの剣士だった。翡翠が強すぎただけで。あの二人も強いんじゃないか」「じゃあもともと実力があってから、冒険者に」「ああ。それしか考えられない」「それに翡翠のパーティーだ。これくらいじゃ驚いていられねえ」
周囲の反応に3人とも戸惑っているようだ。
しばらくして、受付嬢が精算を終えた。
「スライムの核が八十二個、ラビットの毛皮が四十八枚、ゴブリンの右耳が百二十三個、ウルフの毛皮が二十一枚。サイクロプスの眼球が三個で計算して、金貨十枚と銀貨九枚銅貨六枚です」
これくらいの金額があれば、十分に生活できるな。
「良かったら、金貨八枚と銀貨二十八枚、銅貨二十四枚でください。あと、おすすめの宿を紹介してください」
「これくらい稼げるんだったら炎鹿亭がおすすめよ。料理もおいしいし、きれいだし、安心できる。こっからメインストリートを東に進んで二本目の右の道を曲がれば看板が見えるわ」
じゃあ、その宿にしようか。受付嬢から受け取ったお金をそのまま、クーデリカ達に配分した。
「ひとり当たり、金貨二枚と銀貨七枚、銅貨四枚な。ほら」
クーデリカとロイが慌てて受け取って、マリアンヌは何やら考え込みながら受け取った。じーっとお金を見つめている。初任給みたいなものなのかな?
「それじゃあ、疲れたし、宿をとって食事をしよう」