決闘
冒険者ギルドよ。わたしは帰ってきたぞ。
俺は冒険者ギルドに入った。造りは王都と同じようなものだ。冒険のためのフロアと酒場のフロア。昨日の騒動のことを知っているのか何人か、俺から視線をそらした。別に絡まないから。
「おいあれが切断の……」「ああ、翡翠の剣で4つ切りだ」「あの酒を飲むと手が付けられなくなるエルボーをだろ」「しっ。あまり声をだすな。目を付けられるぞ」「俺もあの一瞬を見たはずなんだ、なのに剣閃が見えなかった」「俺もだ」「やばい冒険者じゃねえか」別にやばくないから。
う~ん。後剣士ひとり加入させるか。元々が4人までがパーティーメンバー出来る作品だ。クーデリカ(後衛)、マリアンヌ(タンク)俺(最強)である。あと、俺は魔将が現れたときに前線を離れることになるから、前衛職が必要となるな。
俺はギルド内を見渡す。誰もがパーティーを組んでいそうだ。そんな中、1人カウンターに座っている。明らかに騎士って感じの銀髪青年がいる。こいつにするか。
「クーデリカ、マリアンヌもうひとり加入させるぞ。あいつだ」
クーデリカが不思議そうに俺を見つめる。自信満々だった俺が仲間を増やそうというのが疑問だったのかもしれない。
「突出して俺が強すぎるからな、強大な敵が現れたとき、俺ひとりで対応することになる。その間、クーデリカとマリアンヌと一緒に戦える奴が欲しい」
「お嬢様のためにもできれば女性が良いのですが……」
「周りを見てみろよ。ひとりでいる女剣士なんていない。それにあいつを見ろ。明らかに貴族だ。常識と品がある剣士だぞ。俺と違ってな」
そういわれて反論を紡ぐことができなくなったのか、マリアンヌは仕方なさそうに同意した。
「分かりました。あの方の勧誘をお任せします」
「おう。任せておけ。冒険者のやり方で勧誘してやるよ」
荒事は予想できたので、指を鳴らす。俺はそいつに近づいて行って、隣の席に腰を下ろした。
「なあ、あんた。パーティーメンバーを探しているんだろ。俺のパーティーに入れよ」
「私は強くならねばならんのだ。其方のような子どものパーティーには入れん」
「ならこれで試してみようぜ。俺があんたより圧倒的に強いことを証明してやるよ」
「流石にそこまで言われては黙ってはいられないな。表に出よう」
腰の剣を指す。
クーデリカはわたわたと、マリアンヌは呆れた顔をしている。実力を見せ合うなんて冒険者らしいだろ。
銀髪騎士は剣を構える。俺は銀髪騎士を傷つけるつもりはないので翡翠の剣をしまって、木剣を出す。クーデリカは心配そうに、マリアンヌは見定めるような顔つきをしている。まあ、見てろって。
「木剣を取り出すとはなんのつもりだ」
「実力差だ。それにいったろ、パーティーメンバーに入れって。傷つけてどうするんだよ」
「大怪我を覚悟するんだな」
「覚悟はいらないよ。俺は傷つかないし、お前を傷つけない。ただの模範演技になるよ」
対人戦闘とはいえ、目の前の銀髪騎士からは覇気を感じない。まだまだひよっこだろう。
「いくぞ」
「こいよ」
美麗な剣を振り下ろされる。俺は見切ってぎりぎりでよけた。ジャスト回避発動した緩やかな時の中で、首の両側と腹に木刀を軽く当てた。
「これで俺の3勝だ」
「あ、ああ」
彼は自分の身体が引っ付いているかを確かめるように身体に触れた。今度は避けられないように横に剣が横に薙がれた。俺はパリィを決めて、体勢を崩した銀髪騎士をちょいと木刀で突いた。
「これで4勝。納得するまでかかってきな」
「はい。挑ませていただきます」
それからしばらく銀髪騎士は剣を振るった。俺は避けて、流し、弾いて。確実に勝敗を決める。こいつやっぱり騎士の剣だな。訳ありってことだ。
「参りました」
「おう。よく鍛錬してきたことの分かるいい剣だったぞ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ実力差も分かったことだし、改めて。俺のパーティーメンバーになれ。世界で二番目に強い剣士にしてやるよ」
「はい!よろしくお願いします、師匠!」
「師匠はやめて、レクと呼んでくれ」
俺はパーティーメンバーを手に入れたのだった。