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運命の出会い

 俺は夜を徹して走りつづけた、帝国の一番アイスビッシュ砦に近い辺境都市ウィズタートについたのは次の日の夕方だった。もう正直フラフラだ。今座ったら寝てしまう。さっさと宿をとって寝よう。俺はそう決めた。


 帝国は王国よりも北方にある国だ。冬の間は雪に閉じ込められるし、土がやせているためか食料自給率が低い。その代わりに魔法の研究や物の研究が進んでいる。帝都にはここウィズタートにも帝都行きの列車が通っている。近代化がはじまりつつあるのだ。


 正直言って王国の技術研究部のリーエスの頭が天才的すぎるだけで、一般的には帝国産こそブランドである。閑話休題。


 俺はまず両替商から帝国金貨にお金を変えた。それから石造りの寒い感じをさせる建物に囲まれたメインストリートを歩いていると、冒険者ギルドを見つけた。ラッキーだった。これで都市ウィズタートの依頼を確認して、受付嬢に宿屋を聞けば寝ることができるのだから。


 おれはどんぞこから少しテンションをあげて、冒険者ギルドに向かった。そこでトラブルがあった。大剣を持ったおっさんに滅茶苦茶絡まれているのだ。


「だから、ガキがいるだけで、迷惑なんだよこっちは」

「ご不快な思いをさせてすいません。宿屋を受付嬢に聞いたらすぐに出ていきますので」

「聞いたらじゃねえんだよ。今すぐ出ていけや。雑魚」


 段々怒りゲージが貯まっていくのが分かる。俺も相手もだ。


「出ていきますのでおまちくださいね。すいません宿屋を……」


 後ろから蹴り飛ばされるのがサードパーソンで分かった。ひょいと避けたらジャスト回避だった。面倒になった俺は緩慢になった相手の背後に回り、翡翠の剣で大剣を四つに切り分けた。


 俺の動きが理解できなかったのだろう。顔を青ざめさせて、身体をがくがくと震わせている。雑魚はてめえだ。

 俺はできる奴の雰囲気を作って受付嬢に話しかけた。


「受付嬢さん、おすすめの宿屋を教えてくれない」

「すいません。凄腕の冒険者さん。冒険者ギルド内で武器を抜くことは法律違反なんです」


 俺は留置場にぶち込まれた。なんでも3日間の拘束か、保釈金を支払うことが必要らしい。……もうここでいいだろう。俺はアイテム欄から毛布を出して寝た。


 目を覚ました。

 銀髪を両側に垂らした紫色の目をしたかわいらしいお嬢様。そしてと黒髪黒目の後ろで髪を束ねたメイドさんが目覚めたらいた。


 なんと場に不釣り合いな二人なのだろうかと思った。こころなしか、二人とも不安そうに瞳が揺れている。どうしたのだろうと思って尋ねた。


「何のよう?」


 看守が怒ったようにいう。なんでこの人は怒っているのだろうか。


「こちらのお貴族様がお前の保釈金を肩代わりしてもいいといっているんだ!というかなんで毛布にくるまってスヤスヤと寝てんだ!」


 保釈金を肩代わりすることで、なにかしらさせたいことがあるってことか。直接聞いた方が早そうだ。


「は?肩代わりねえ。それでお姉さん方は俺に何をさせたいの?」


 黒髪のメイドさんが前に出て話してくれる。


「私たちはとある事情で仕事を探さなくてはいけなくなりました。そのための案内人をさがしています。できれば街に詳しい人間を」


 なるほど、仕事を見つけるための案内人を。


「じゃあ俺は適任ではない。この街どころか帝国の人間ではないからな」


「では、話は終わりです。お時間をありがとうございました」

「まあ、待ちなよ」


 この二人ステータスを試しに見てみたら才能の原石だ。極振りの精神魔術師に純タンク職だ。こういうパーティーメンバーを探していたんだ。


「俺にも紹介できる仕事はひとつだけある。冒険者だ。これでも俺は……中級の依頼もこなしたことあるベテランだ。……そうはみえないだろうがな」


 本当にね。9歳ですけどミスリルプレートの冒険者なんです。ではあまりにもあやしいのでシルバープレートを装う。

 なんとかしてこの二人をパーティーメンバーに誘いたい。


「それに職をさがしたって、稼げる額は身体でも売らない限りたかが知れているぞ。お嬢様とメイドさんはそれでいいのか?」


 実際職歴もコネもないではきついだろう。この世界マジでコネが重視されるからな。だからハインツやロイももう就職が内定しているわけで。


 パーティーメンバーにするにはもう少し彼女たちの事情をしらなければならないだろう。


「そもそも事情を話してみな、何か力になれるかもしれない」


 なんでもまともに魔法が使えない無能だと家から追い出されたらしい。そりゃそうだ知力依存の魔法なんか使ってもたかが知れてるだろ。


「なるほどね。お嬢様はいくつなんだい」

「今年で12歳になります」

「俺は9歳だ。なおさら職を見つけるのは難しいだろうな。一般的にはその年にはどこかで徒弟や丁稚として働いているものだ。ましてやお嬢様の高貴な髪の色、働くのは難しいだろうな。精々マリアンヌさんがどっかの屋敷か商会で働いてその稼ぎを貰って食っていくとかだな」


 これが現実的な案のひとつになるだろう。


 彼女にとってこの案は受け入れがたい案らしい。ならば最善のプランが俺にはある。


「そこで冒険者だ。俺ならあんたたちを一流の冒険者にしてみせる。俺がリーダーとして活動させてくれるならな。どうだ。俺とパーティーを組んで冒険者をしてみないか。一流の冒険者になれば、お前の親父さんだって申し訳ない間違っていたって謝るさ」


 本当にそれほどの冒険者に俺が育ててみせる。だから俺の手を取ってほしかった。


「マリアンヌ……」


 お嬢様は意見を求めるようにメイドさんに声を掛けた。


「お嬢様の決められた道が、私の進む道です」


 おおう。なんたる忠義。勘当された娘についてきただけあって、厚い忠義がある。お嬢様をいじるときはほどほどにしようと思った。


「わたくしたちを一流の冒険者にしてください」


 真摯に頭を下げられた。ならばその誠意に俺も答えたい。


「おう、任せておきな」


 絶対に一流の冒険者にしてやるからな、そして仲間にするぞ。


「では、保釈金を」

「いやいい。パーティーメンバーに金を借りる気はないんだ。貸すのはいいがな」


 借りるのは申し訳なくてつらい。貸すのはあげるつもりで意気だ。そもそも俺はお金には困っていないし。俺はアイテム欄から王国の金貨を両替した帝国のお金を取り出した。


「てめえ、なんで拘留されてんだよ。保釈金を払えよ」

「昨夜の寝る場所を決めるのが面倒でな、もうすこししたら払うつもりだったさ」


 十分寝たからね。おかげで昨夜あったイライラもすっきりだ。


「それに最高の出会いもあったしな。保釈金はいくらだ?」


 本当に理想的なステータスをしたメンバーだ。ゲームでも厳選でもしないかぎりいないぞ。


「銀貨三枚だ」

「ほらよ」

「はあ」


 疲れたようにため息をつく看守、そうだよな、こんな不衛生な職場しんどいよな。


 おれは新たな仲間に自己紹介をした。


「俺の名前はレク。よろしくな」

「わたくしの名前はクーデリカですわ」


 銀髪のお嬢様がクーデリカお嬢様、と。


「私の名前はマリアンヌです。お嬢様に不埒な真似はゆるしませんよ」


 さっきから微妙に俺を睨んでいるのがマリアンヌさんね。


「しないよ。婚約者がいるから」


 それも最高にかわいい婚約者が5人だ。ぐへへ。


 さあ、まずは冒険者ギルドに二人の登録に行くか。

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