カウネルでのこと
俺は一夜野宿して、カウネルへと向かった。いくら強くなったといっても、まだどのボスにも圧勝できるだけのステータスではない。雑魚相手でも貴重な経験値だ。道中出てくるモンスターを狩りながら進んだ。
カウネルの近くでオーガが二匹連れ合っていた。俺は有無を言わさず。一匹を後ろから袈裟切りにして、もう一匹をそのままの勢いで切り上げた。もちろんこれで倒せるほどボスモンスターは甘くないが、もう瀕死だ。俺は余裕を持って首を刈り取った。
そうしてようやくカウネルに着いた。流石にここまでは遠い。遠いだけあって多くのモンスターを討伐することができた。タイラント戦以来レベル70で止まっていた俺のレベルは1上昇して71になった。やった。
まずは冒険者ギルドに顔を出す。オーガ二匹やってしまったからね。依頼票があるなら事後だけど受理して処理しとかないと。案の定、オーガ二体の討伐依頼があったのでミーヤさんを呼んで処理してもらう。
「えっ領主様、もうオーガ二匹の討伐をなされているのですか、流石です」
でしょう。俺は鼻高々になった。
領主館のレイリさんのところに行く。実質あの人が領主だからね。執務室前で声を掛ける。
「レイリ君。入るよ」
「ご領主様。お入りください!」
見て驚いた。書類の山々、左遷されて腐った眼をしていた人々が飢えた狼のように眼を輝かせて書類仕事をしている。俺としては目の隈が気になる。24時間戦ってそうな勢いだ。
「領主様がモンスターを間引いてくださったお陰で、大規模な畑作が出来そうなんです、そうなれば、このカウネルの地こそが王国の食糧庫となれることもありそうな勢いです」
順調そうで何よりだ。
「ただ、最近オーガ二匹が現れたようで、冒険者の達成依頼を待っているのです」
オーガ二体。さっきやったやつのことだろう。
「オーガ二匹の依頼ならさっき俺が倒してきたよ。達成報告もしている」
レイリさんが目をひん剝いて驚く。おおう。この人のレアな表情をみている気がするぞ。するとそのあとで悪い顔になった。
あと、周りの人が歓声を上げて生き生きと仕事に戻っているのだが大丈夫なのだろうか。
「ミーヤめ。オーガの件は最優先事項といったではないか。報告に来ないとは何をしている」
よくわからんが、仲良くするんだぞ。
「それで本日はどうなさったのですか?」
「都市コレントに巨魔将タイラントが現れてな。これを討伐した。報奨金を貰ったから、これで領主館の改築をお願いしたい。俺には婚約者がいるからなあ。いずれは一緒に暮らすことになる。その環境づくりをしてほしい」
「また魔将を倒されたのですか!流石です」
さすがご主人様っていいそうな勢いだな。こんなひとだったか。
「これが報奨金だ。残った分は政策に回せ」
「ありがとうございます。領主館の規模はどの程度をお考えでしょう」
ユリア、イリア姉さん、サリア、フレア、アリア。そしてその子どもたちと暮らしていくと考えると。
「どーんと20人くらいが暮らせるように造ってくれ。頼んだぞ」
「にじゅっ!いえ、かしこまりました」
「あと、休みを取るのも仕事だ。ほどほどに休めよ」
俺はあの熱気に押されて、領主館から逃げ出した。
さあ、帝国での冒険だ。