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転移柱を砦に

 次の日俺は孤児院の庭の隅っこに差されていた転移柱を引っこ抜くことから始めた。この柱は、あの日の再現が行われないように保険として差していたのだ。実際役に立ってくれた。ありがとうございます。


 とはいえ、今の情勢を鑑みれば、最も魔軍の侵攻が心配される地点は、アイスビッシュ砦になる。人類を勝たせるという俺の目的のためには、アイスビッシュ砦に配置せざるを得ない。もっといっぱい転移柱があったらいいんだけどな。今後の冒険の課題だ。


 俺はコレントの街に別れを告げると、アイスビッシュ砦に向かう。半日ほどで着く。アイスビッシュ砦の脇に見えないように転移柱を設置する。これで大丈夫だろう。一応アイスビッシュ砦の責任者に連絡しておかないと。


 門番さんに取次ぎをお願いすると、大分敬意を持った待遇で迎えられた。もしかしたら、アイスビッシュ砦の攻略時に一緒にいた人だったのかもしれない。


 最奥の天幕に移動すると、案内してくれた兵士さんが大きな声でいう。


「冒険者のレク様をお連れしました」

「入れ」


 この声はもしかして……ローレン将軍ではないだろうか。


 天幕に入ってみると案の定ローレン将軍がいた。なにやら、書類仕事をされていたようだ。お互いに多忙ですね。


「レク殿か。アイスビッシュ砦に来られてどうなされたか?次の魔将がくるのがここだと分かったなどではないと嬉しいのですがね」


 いいながら羽根ペンを置くと、煙草に鋏を入れて火をつける。煙たい。


「いいえ。アイスビッシュ砦に転移柱を設置させていただきました。ローレン将軍はこちらの道具をご存知でしょうか」


 俺はポケットから伝言石を取り出した。


「ああ、技研が作ったという伝言石ですね。ここにも一台配備しておりますよ」


 おお。流石は人類の絶対防衛線。新作の軍の道具も早速配備されているらしい。


「でしたら、緊急時に伝言石を使用してもらえると、私が転移してきますので、よろしくお願いします。ということをお伝えに参りました」


 ローレン将軍がいいことを聞いたとばかりに笑う。憎い敵を獲ったマフィアの顔にしか見えない。


「それはいいことを聞きました。毎日のように襲来してくるモンスターどもならともかく、魔将が現れたとなると、現在の軍では対応しかねます。その際にはレク殿を是非頼りにしたい」

「現在の軍ではとなると、将来的には対応できる見込みがあるのですか」

「ええ。技研のものどもが今、あらたな兵器をどんどん作っております。中にはこれは魔将にも効くのではというものも。いずれ、軍が魔将を討ち果たすときが来るやもしれません」


 へえ。爆発ポーションとかあるし、鉄砲みたいなのでも作っているのかな。ゲームでは王国は滅びてしまっていたけど、もしもあと十年時間があったら近代化した兵で魔軍と戦っていたのかもしれないな。


「その将来に期待したいところです。いずれは私の手が届かないところに魔将が出たなんてこともあるでしょうし」

「そんなことはないと願いたいですな」


 ふたりして、ぼんやりと煙の行方を追った。煙草って美味しいのかな。俺は元高校生だったから分からん。


「さて、伝えることは伝えたので俺は行きます」

「はい。我らが英雄殿ご武運を」


 俺たちは別れた。

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