孤児院でフレアと
日も暮れたころ、俺は孤児院に帰ってきた。
賑やかな食事をする。食後のまどろみに、俺はいかに巨魔将タイラントが恐ろしいやつだったかを説明する。ちび達は震えながら聞いた。
そしてそれを討った俺がいかに戦ったかを語った。ちび達は手に汗握りながらきいていた。
話の後で、らしくない表情でハインツが話しかけてくる。
「兄ちゃん。俺、モンスターが怖いよ。教会にコボルトが襲ってきたとき震えて何にもできなかった」
「普通はそうなんだ。兄ちゃんがすごいだけだ。けどなハインツ、あんな状況でも泣かずにロイとサナの手を握ってやっていたハインツも十分すごいやつなんだぞ」
「俺も自分と家族ぐらいは守れるくらい強くなりたいよ」
「都市の中にいる分には問題ないと思うがな。でもそれでも強くなりたいなら、鍛冶場でしっかりと働いて装備を整えて、休みの日にスライムを狩るところからだろうな。もっと大きくなってからじゃないと泣くはめになるぞ。兄ちゃんはスライムに泣かされた」
「うん、知ってる」
「このこの。兄ちゃんが同行することがモンスター討伐に行く条件だからな、勝手にいくなよ」
そんな話をした。ハインツを捕まえて、こちょこちょしてやった。
夜、俺はベッドでそわそわしていた。フレアと夜話す約束があったからだ。眼だけがギンギンとしていた。
「レク。おまたせ」
フレアが身軽に降りてくる。待ってたよ!
「ああ。フレアか今日はお疲れ」
俺はレイセイを装いながら声を掛ける。
何かツボに入ったのかくすくすと笑うフレア。
「レクったら分かりやすいんだ」
マジですか?そんなにもそわそわしていたことが表に出てた?
「家のことをするのは前々苦じゃないから、疲れてないよ」
「そんなことはないさ。少なくとも俺は家のことを結構さぼりたくなる」
「それでよくシスターテレサ怒られてたね。レクは」
「やめてくれ。シスターテレサの雷は効くんだ。今思い出してもきつい」
くすくすと笑うフレア。しばらくすると表情を改めた。真剣な表情をする。
「それで、レク話ってなに?」
「……俺は次に魔軍が攻めてくるのは帝国だと思っている。だから、すぐにでも帝国に冒険に行くつもりなんだ」
しばらく黙り込むフレア。俺も黙り込んでぼーっと上段ベッドの底を見た。
「レク。ちゃんと帰ってくるよね」
「当たり前だろ。かわいい婚約者で家族がもうここにいるんだ。帰ってくるに決まってる。それに俺は強いから道中も安心だ」
「うん。レクが強くなったところ教会で見たから知ってる」
フレアが俺の服を握りこむ。
「レク。あの日助けに来てくれてありがとうね」
「おう」
そうしてフレアは小悪魔な笑みを浮かべた。
「そういうことは、レクったら今度はもっと長く帰ってこれなくなるんだ。サリアも行商に出るっていってたし、私寂しいな。」
指を唇に当てる。
「レク。寂しくなくして?」
俺はそっと口づける。
「そんなんじゃ全然寂しいままだよ。もっとしよ。レク」
俺たちは唇がふやけるまでキスをした。
なんだかフレアの手のひらの上でコロコロされている気分だった。