中庭でユリアと
ユリアとお茶する時間は幸せだなあ。俺はユリアとお茶していた。
「レク様、この度のご戦勝おめでとうございますわ」
「うん。危ない場面もあったけれどなんとかなったよ」
「聞く話によると、城壁が砕かれてモンスターが都市に入ってきたとか」
「そうなんだ。タイラントの悪あがきでね。避難者から怪我人が出なくてよかったよ」
ユリアはもじもじと指を絡めるようにすると、話を切り出した。
「レク様手をつなぎませんか?」
「もちろん」
俺はユリアの隣に椅子を持っていって隣に座る。そしてそっと手を握った。
「レク様の手はごつごつとしたしっかりとした手ですわ」
「これでも毎日剣を振ってるからね。ユリアの手は華奢で柔らかいね」
お互いに無言になる。婚約しているとはいえこう、こみ上げてくるものがあるな。
ふと、悪戯心が湧いた。おれは恋人つなぎへと移行する。
「レク様。これはなんか恥ずかしいです」
「あっはっは。いずれはなれる日も来るさ」
来てくれないと困る。俺はもっといろいろなことをユリアとしたいのだ。
「もうレク様ったら。時々子どもみたい」
「まだ9歳だよ」
まだ9歳なのに婚約者が五人もいる。レクよお前は高校生だった頃の俺をはるかに超えている。このまま精進せよ。
「レク様は、これからどうなさるおつもりなの?カウネルで領地を運営するのであれば、私も同行いたしますが」
「いや、帝国に行こうと思っている。恐らく次の魔軍の侵攻は帝国だろうと思っているから」
「そうですか。寂しくなりますね」
「どうしても俺に会いたかったら。この伝言石で俺に連絡をくれ。王城の転移柱に登録したから文字通り飛んでくるよ」
「伝言石はまだまだ貴重なんですよ」
「ユリアに寂しい思いをさせない方が大切さ」
「ふふふ。どうしても寂しいときはもしかしたら伝言石を利用しますわ」
「そうしちゃえ」
ユリアが笑ってくれた。彼女が笑ってくれるだけで辺りが明るくなる気がする。お姫様のオーラというやつなのだろうか。
ユリアの方からぎゅっと手を握ってきた。
「……レク様お慕いしておりますわ」
「俺もユリアのこと大好きだよ」
ユリアの頬が赤い。ユリアはなんでもそつなくやりそうなイメージなのでこんな初心なところがいとおしい。
「必ずご無事で帰ってきてください」
「ああ。俺は最高の冒険者だからな。無事に決まってるさ」
昼下がりの中庭。おいしい紅茶と隣には手を握った、両想いのお姫様。
今の俺は勝利者だった。何に対して勝っているのかはわからないが。