異世界スマホ?
オーギュスト様に連れられて、王城を歩く。王城は装飾品が凝っており眼福である。道中ユリアたちが描かれた王族の絵があってほっこりした。
まず、オーギュスト様に連れられてきたのは城の奥。
「ご苦労」
「はっ」
警備をしている番人に挨拶をしている。俺がご苦労というのも変なのでぺこりと頭を下げた。そこは城の宝物庫のようであった。
オーギュスト様は宝石箱を開いた。そこにはジャラジャラと飛行石が詰め込められている。確かに飛行石は一部NPCが作ることができる。この時代王城にはその技量を持った人物がいたらしい。
「レク様どれほどの数がご必要でしょう」
「それほど使うものではないでしょうが、一応十ほどいただけますかオーギュスト様」
「私に様はおやめください。レク様はまごうことなき救国の英雄です。その英雄に様付けよばれるほど、私は偉くありませんよ」
絶対嘘である。ローレン将軍と出た式典でもこの人が勲章をつけてくれた。俺には想像もできないが何かしらの部門の長官とかであるのは間違いない。
「ははは。では恐れ多いですがオーギュスト殿と」
「はい、レク様」
続いて、近くの部屋の一室に案内される。そこの中心には転移柱が設置されていた。
「それではオーギュスト殿、転移の登録をさせていただきます」
俺は転移柱に触れて魔力を込める。魔力を込めていくと、一瞬だけぴかりと転移柱が輝いた。
「登録できました。ありがとうございます」
「いえ、王都に何かあったときにレク殿が駆けつけていただける道ができたと考えると心強く思いますよ。こちらこそありがとうございます」
お互いにありがとうと言いあう。ふたりしてにっこりと笑った。
「あとは技術研究部でしたな。少々遠いですが、ついてきてくだされ」
オーギュストさ……殿がいった通り。技術研究部は遠かった。というか宝物庫があるところとは別棟にあった。技術研究部はすごかった。多くの書籍が並んだ本棚に多くのテーブル。そして白衣を着た研究者たちが入れ替わり立ち代わり移動していた。
あっ飛行石を削りだして、魔法を込めている人がいる。ここであの飛行石を作っているらしい。
「リーエス!いるか?」
「はーい。リーエスいるっすよ」
リーエスさんは乱雑に藍色の髪を後ろでくくった女性だった。小さな石板を前にふてぶてしく座っている。
「リーエス。呼んだら来ないか」
「いやー。いい考えが思いつきそうな感じがしてたのでつい……」
「リーエス。例のものをこちらのレク様にお渡ししなさい」
「伝言石のことですか。分かったっす」
リーエスさんが机の引き出しをガサゴソとしだすと、机の中整理されてないなあ。ひとつの手のひらサイズの石板を取り出した。
「これっすね」
「レク様、どうぞお受け取りください」
「これは?」
ゲームでも見たことがないアイテムだ。手のひらに乗せる。スマホみたいだな。石だけど。
「これは先ほども言いましたが伝言石っす。これに連携させた石板に文字を書くと、その文字が表示されるようになってるっす。こんな感じで」
先ほどきから机の上に置かれていた石板にチョークで『こんな感じっす』と書く。
すると持っていた石板が震えて、灼けたような赤色の文字で『こんな感じっす』と表示される。……これはすごい。この世界のスマホみたいなものだ。いわば異世界スマホである。
「これはすごいですね!世界が変わりますよ」
「でっしょー。私は天才っすからね」
間違いなく天才だ。この世界の軍略も生活も変化させる技術である。
「これがあれば、有事の際にもレク様に連絡を取ることができます。お持ちください」
「わかりました。私も王国を空けることに不安があったのですが、これなら安心ですね」
俺は異世界のスマホを手に入れた。




