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アリアと屑

 次の日、俺は領主館へと呼ばれた。


「いや、レク殿がおられなければコレントの都市は本当に崩壊していただろう」

「そうかもしれません。私の夢ではそうなりましたから」


 本当に一か月の間長い悪夢だった。

 しかし、俺は乗り越えたのだ。よくやったぞ俺。


「レク殿、何か望みはあるかね?レク殿に報酬を渡さなければ、私は周囲から恩知らずと笑われてしまうのでな」


 俺にはほしい報酬があった。報酬っていうのもあれだが。


「それでしたら、マークス様、アリア様に婚約を申し出る許可をください。アリア様がお断りになったら、この話はなかったことにしてください」

「ワタシのカワイイアリアにコンヤクをモウシデタイ?」


 急に機械のように話し始めるマークス様。俺は親ばかのマークス様になんて所業を。しかし、引き下がるつもりもない。都市を守りました報酬にお嬢様をくださいというのは鬼畜だろうか。鬼畜だな。


「ええ。それが私の求める報酬です」

「センベル、センベル。レクドノをアリアのトコロニオツレシナサイ」


 マークス様頑張ったよ。俺は貴方の頑張りを知っています。


「レク殿。アリア様のお部屋にご案内いたします」


 相変わらず、気配がなくてすごいなセンベルさん。こういう執事さんの前職は暗殺者だったりするんだ(偏見)。

 センベルさんについていってアリア様の部屋に向かう。


「アリア様。レク様がいらっしゃっております」

「レク様が?入ってください」


 窓の傍にあるテーブルで手紙を書かれていたらしい。アリア様。よかった病気は快癒されたようだ。


「アリア様。ご無沙汰しております」

「ええ。レク様。この度の戦いではレク様に都市を救っていただきました。マークス・コレントの娘として、レク・カウネル様に改めたお礼申し上げます」

「いいえ。私には私のできることをやっただけです」

「もしあなたの偉業がただのできることでしたら、まさしく英雄の所業ですわ」


 いまいち、会話が踏み込めてない気がする。もう少し様子を見るか。


「アリア様、本日はせき込んでいらっしゃいませんしご病気はもう治られたのですか」

「ええ。レク様が取ってきてくださった。材料から作った治癒薬のおかげで」

「それは素晴らしいですね」

「レク様にそう仰っていただけると嬉しゅうございます」

「アリア様が元気になったらそれはもちろん嬉しいですよ」

「そうそう、レク様もユリア姫様との婚約おめでとうございますわ」


 カーンとゴングが鳴った気がした。勝負はここからか。


「ええ。ユリアが私のことを好きだと言ってくれたのでめでたく婚約と相成りました」

「素晴らしいことですね」

「ところで」


 俺は切り込むことにした。馬鹿なのだからできることはすくないのだ。


「私は今回のコレントの都市防衛の報酬にアリア様が欲しゅうございます」

「えっ」

「私はアリア様に惹かれておりました。アリア様はどうでしょう。もしも無理などと思うなら私からマークス様に取りなすつもりです」

「でも私なんかがユリア姫様と釣り合うわけが」

「いいえ。ユリアにはユリアのアリアにはアリアの素晴らしさがあります。少なくとも私はどちらの方が愛しているか問われると答えられません」

「でも、私なんかが」

「私なんかなんて言わないでください。私は貴方と話していると楽しくて仕方がなかった」

「それは、私もです」

「これを受け取ってくださいませんか」


 茶色のダイアモンドがはめ込まれた指輪を差し出す。ユリア様はその指輪を恐る恐る両手でとる。


「私は、魔軍の襲撃に備えるためにも、しばらく各国を転々とするでしょう。これは婚約の証としてお持ちいただければと思います」

「……はい。レク様。私レク様のことお慕いしておりました」


 アリア様は泣き笑いの表情を浮かべる。


「ユリア姫様との婚約でレク様のこと諦めていたはずなのに、こんなことってあるんですね」

「貴方が素晴らしい女性だからですよ」


 アリア様が両手を広げられる。


「レク様抱きしめてくださる。あなたの形が忘れられないように」

「もちろんです」


 俺は立ち上がると、アリア様を強く強く抱きしめた。

 その姿は完全に屑の行いだったと思う。いや、この世界で一夫多妻はあることだから。自分で自分に言い訳をした。

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