タイラントと絶望
押し寄せてくる膨大な雑魚どもを蹴散らして、巨魔将タイラントの下に急ぐ。
理想をいえば、雑魚敵はみんな倒してしまいたかったが、タイラントに城壁にとりつかれる方がまずい。
あとは、領軍と冒険者たちがなんとか防いでくれると信じるしかなかった。
俺が、タイラントを討つしかない。
なんとか作ったタイラントへの道をモンスター達の死骸が邪魔なので収納しつつ駆け抜ける。そうして、俺はたどり着いた。二十メートルはあるのではないかという身長に、強靭そうな体つき、ゴリラのような体毛の生え方をしている。
こちらを認めたのか、足で踏みつぶそうとしてきた。事前に詠唱していた、疾風の効果もあって何とか駆け抜けられる。そのままの勢いでもう一方の足に近づいて、足の健を狙って振りかぶる。紅玉の剣を以ってしても浅くしか削れない。
しかし、こちらの攻撃が入ることは分かった、得意の持久戦に持ち込もう。
相手の薙ぎ払いを大跳躍で、蹴りをダッシュ回避で避けて、合間合間に傷を深くしていく。そうしていると立っているのがつらくなってきたのかタイラントは膝をついた。タイラントは蚊を潰すときみたいに俺を押しつぶそうとした。はっや。ダッシュ回避したが大きな掌でよけきれなかった。風護が発動する。当たると分かったからなのか、バンバンと叩き続けてくる。
俺は必死になって竜の小盾で防御した。これは装備を更新していなかったら、つぶれて死んでいたな。朦朧となりながらそんなことを思った。小盾で防ぐと同時に詠唱を始めていた炎柱を発動した。
ポーションを飲んで、炎柱に驚いてひっくり返った。タイラントに登る。そしてそのまま大跳躍で必死に顔を護っているタイラントの首を裂いた。全然深さが足りない。
俺は爆発ポーションをありったけその傷に落として、直ぐ退避する。
奴は害虫を払うように首元を払った―――その瞬間大爆発が起こる。
喉の半分を失ったやつは、虚ろそうに倒れていた。俺は奴にとどめを差すべく、喉元に迫る。俺を認識した奴は笑ったのが分かった。奴は俺が散々切りつけた片足を自らもぎ取るとコレントの城壁に投げつけたのだ。俺は奴の首を断ち切る。
タイラントはやり遂げた顔して逝きやがった。
コレントの都市を振り返る。奴の投げられた片足のせいで城壁が崩れている。
拡声魔法を使った兵士から連絡が来た。
「レク様、魔物たちが都市の中に冒険者と協力して事に当たっていますが、数が多すぎます」
最悪の事態だった。
タイラントと戦うために、俺はコレントの都市から出来るだけ離れて戦うようにしていた。ここから、雲霞の如く群がっている敵を殺しながら都市に戻っていては被害が出てしまうかもしれない。
いや、走っていては間に合わない。
コレントの都市に向かおうとしていた俺の足は止まった。
 




