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運命の日

 次の日俺は朝から西の城壁に待機していた。王都がある東から攻めてくる危険は少ないと判断してだ。最も可能性があるのは西側だろう。

周囲には多くの兵士たちがいる。

 マークス様、本当に信じてくれて準備してくれていたんだな。ありがたい。


 周囲からは尊敬の目で見られると思いたい。なにやらひそひそと話していてこっちには聞こえないのだ。おそらくミスリルプレートだ。すげええとかだろう。


 俺はアイテム欄からフレアが作ってくれたサンドイッチを取り出て食べた。

 シャキシャキとしたレタス。チーズの味がたまらなくおいしい。やりおるな。


 昼前に、前方に異様な人影が見えた。巨大なのだ。周りの木々がおもちゃに見えるほどに。俺は『スキルツリー』から『遠見』を取得した。使用してみるとそれは、笑った猿のような巨人だった。巨魔将タイラントだ。その周りには多くのモンスターが蠢いている。


「すぐに鐘を鳴らせ。前方に巨魔将タイラントと、モンスター多数!俺はタイラントを討ちに行く」


俺は周りの兵に命じて、すぐに城壁から降りた。あいつと城壁の近くで戦っていられない。あいつの攻撃が少しでも城壁に当たれば、城壁は砕かれてしまうことだろう。


 そうか、あの巨魔将のせいであの日俺の都市が……ぶち殺す。



 それはまさしく英雄の姿だった。

 現れた巨魔将に私は震えることしかできなかった。しかし、9歳であるはずの子どもが城壁を駆け下りて、巨人へと向かっていく。

 巨魔将の周りにはサイクロプスやホブゴブリン、コボルトなどが数えられないほどいた。こんなのどうしようもない。数に押しつぶされて、殺されるだけだ。そう思った。


 しかし、レク様は違った。集まってもう一つの塊のようになっている敵軍に突っ込むと、紅い剣を振るう。塊が削れる。嵐のように剣を振り続ける。敵が倒れ続ける。隙を突けとばかりに飛びかかったコボルトがいた。


「あ……」


 危ない。そういうつもりだった。しかし逆に飛びかかった方のコボルドが、首を跳ねられて、倒れた。たった少しの時間で、レク様の周りに円状の空間ができた。モンスター達がレク様を恐れているのだ。レク様が剣をささげるようにしている。何もしているようには見えなかったが、突如魔方陣が浮かんだ。


 嵐の柱だ。レク様は敵の中心部に嵐をおつくりになったのだ。敵たちは嵐に引きずり込まれ、打ち上げられ、引き裂かれていく。


 レク様はどこからか槍を取り出されると、巨魔将の方向にいるモンスターの集団に投げつけた。槍は何匹ものモンスターを貫いていく。塊のようになっていたモンスターは砕けた。


レク様がこちらを見る。レク様のあまりの強さに恐ろしくて震えた。

レク様は、大音声で叫ばれる。


「俺が今から巨魔将相手に専念する。後は任せた」


 レク様は、巨魔将との間にできた道を走り抜ける。不思議なことに邪魔なはずのモンスターの死骸が光の粒となって、レク様を導いた。


 残りのモンスター達がコレントの城壁にとりつこうと近づいてくる。


「矢を構えよ!生きていたいのなら、兵士であるのなら矢を構えよ」


 指揮官が叫ぶ。身体は生きたいと思っているのか矢を構えて撃つ。

 敵の数が少量であるが減っている。矢玉は大量にある。聞いた話ではレク様が進言なさっていたらしい。あの青い瞳はどこまで先を見通しているのだろう。

 少しでも敵を減らそうと、城壁を上ってこようとするモンスターどもを撃ち続ける。


 遠くに目をやると、レク様が巨魔将タイラントに挑もうとしていた。

 あそこはもう、私たちが関われる領域ではない。英雄のみが立ち入れる領域だ。

 私はただ、レク様がこの都市のために勝ってくれることを祈り、弓を引き続けた。


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