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装備更新②

 翌朝、どんよりとした気分で目が覚めた。結局うまく眠れなかったのだ。

 どんよりとした表情をしている俺を見たフレアはささやくようには言った。


「レク。また今度ね」


 フレアさん!何がまた今度なんですか!ちゃんとはっきりいってくださいよ。とはいえ、いつまでも悶々とはしていられない。今日は黄玉の月の12日、装備更新の日だからだ。


 装備の更新。なんと素晴らしい響きなのだろうか。そもそも俺の感覚としてはアクションRPGなのだ。もっと頻繁に武器や防具をアップデートしていくものなのだ。しかし、人間の領域がまだ魔軍によって支配されていないため、先祖伝来の○○みたいな装備が落ちてないし、魔軍たちが使用している装備が手に入らないのだ。俺が持っているそういう装備は狂魔女クライディアの鋏と針だ。アイテム欄の中で眠らせているが使うときは来るのだろうか。


 というわけでレベルにあった装備あった装備に久々にできるということは、素晴らしいことなのだ。バイブスを刻んでいかなければならまい。


 眠たかったし、店の開く時間でもなかったので俺は二度寝をしてから、シスターテレサがこういった行為を許してくれるのは珍しい、まずはガンダのおっさんの鍛冶屋に向かう。


「ガンダのおっさん。武器はできてるか?」


 そこにはゾンビがいた。いや、ゾンビのような表情をしたガンダのおっさんがいた。生気を最後の一滴までしぼったような顔をしている。


「おうレク。装備ならそこにできているぞ」


 鞘に納められた、一本のショートソードが立てかけられていた。


「抜いても?」

「ああ、確かめてくれ」


 剣を抜くと、その美しさに思わずため息が出た。紅い剣だ。ルビーのように紅く透き通っている。そして翡翠の剣とは比べ物にならないほどの圧倒的な圧力を感じる。


「いい剣ですね」

「だろ。俺の傑作だ。もっていってくれ」

「でも、なんで紅いんですか?」

「俺も分からねえ。打っているうちに紅く透き通っていったんだ」

「ガンダのおっさん。ありがとう。俺はこれで最強の冒険者になるよ」

「ミスリルプレートの冒険者にいわれると冗談に聞こえねえな。さあ、今日はもう店じまいなんだ。レクだけが今日の客のつもりで開けていただけだからな。もう帰った帰った」

「おう。無理をいって悪かったな。ありがとう」

「おう」


 俺は店を後にした。背後から人が倒れこむような音がしたが、気にしないことにした。


 つづいて、隣のリエル防具店に行く。覚悟をしなくてはならまい。ここにもゾンビがいると。


「リエルさん。防具はできてるか?」

「ああ、レクくん。いらっしゃい」


 ああ。やはりここにもいたか。生気のない顔をしたリエルさんがそこにいた。やはり期限は十日というのは、無理があったのだ。


「防具ならできているわ。試着してみてくれる」

「はい、わかりました」


 俺の要望を受け入れてくれたらしく、一見すると地味な皮鎧となっている。しかしそこに秘められた凄みは隠しきれてない。

 俺はうきうきと皮鎧を着る。凄い。動きを全く阻害しない。


「リエルさん。これ動きやすくってすごいです」

「防御力もすごいわよ。これの加工に何本の鋏と針が無駄になったことか」


 鋏と針……か。縁かもしれない。俺は狂魔女クライディアの鋏と針を取りだして、思い直してしまった。なんか夜な夜な人の生皮をはいで防具にするリエルさんが見えた気がしたからだ。


 こんな危ないものは渡せない。


「調整が必要なところはある?」

「大丈夫です」

「よかった。あとはうろこで作った胸当てと小盾をそっちに置いているわ。持って行って」

「はい」


 胸当てと小盾も一見して竜のうろこを使っていると分からないように仕上げてくれている。ありがたい。


 あまり目立ちすぎるのも好きではない。まあ……紅玉の剣をぶん回して戦う以上無理だろうけど。


「ありがとう。俺はこれで最強の冒険者になるよ」

「ミスリルプレートの冒険者にいわれると冗談に聞こえないわ。さあ、今日はもう店じまいなの。レクくんに装備を渡したら十分に寝ようと思って」

「おう。無理をいって悪かったな。ありがとう」

「うん」


 俺が店を出るとともに看板がクローズドに変えられた。それを見てガンダのおっさんの鍛冶屋もクローズドに変えておく。


 二人ともありがとう。この武器でこの都市を守ってみせるから。


 後日、同じ日にお店をお休みした二人は付き合っているという噂が都市に流れた。

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