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夜にフレアと

「我々を慈しんでくださっている女神アレイアよ。わたしたちに生きるための糧をお与えくださったことに感謝します」


 いつもの黒パンに加えて肉の入ったスープと、ステーキが院の食卓に並んだ。年少組のちび達は目を輝かせている。


 やんちゃ坊主のハインツは、次々に肉を切っては口に入れている。

 学者気質の少年ロイは、ひと口ひと口と味わうように食べている。

 寡黙な少女サナは、ちまちまと小動物みたいに味わっている。

 日頃厳しく質素倹約を口にしているシスターテレサも今日は雰囲気が柔らかい気がする。

 頑張ってよかった。家族たちの姿を見て改めて思った。


「ほれにひても、にいはんはすげえなあ。ホーンラひッドを倒せるなんて」

「ハインツ。飲み込んでからしゃべりなさい。兄ちゃん自身もびっくりしたよ。戦士の寵愛をいただけたらしく、スライムどころかホーンラビット相手でも勝てるようになるなんて。女神さまに感謝だな」

「こんな食事が毎日できるのなら、俺も冒険者を目指そうかな」


 追従するようにロイがうんうんとうなずく。


「うーん、あんまりおすすめできないかもなあ。冒険者なんて食っていけるようになるまで時間かかるし、学院でも出て魔法を使える奴ならともかく、子どもだったらパーティーもまともに組めない。モンスターも怖いぞ」

「えー。兄ちゃんがそれを言うのかよぉ」

「俺には実際に銀の匙をくわえていたからいいのさ。それに聞いてるぞ。ハインツは鍛冶場で、ロイは商会で働けるかもしれないんだろう」


 サナがくいくいっと服の裾を引っ張った。


「サナね。お兄ちゃんとなら結婚してあげてもいいよ」

「おー。そうかありがとう。10年後同じセリフを言ってくれ。それにこれくらいで驚いていたら大変だぞ。お兄ちゃんがもらった戦士の寵愛はこんなもんじゃないからな」


 フレアが驚いた顔をしてこちらを見る。


「今まで苦戦してたスライムどころか逃げ回っていたホーンラビット倒せるようになったのでもすごい成長なのに、もっとすごい寵愛をもらったの?」

「ああ。しばらくはスライムとホーンラビット相手にするだろうけど、直ぐに妖気の森の中層部までいけるようになるだろうよ」


 すごいすごいとはしゃぐちび達に対比するよう、曇った顔をしているフレアとシスターテレサの顔が印象に残った。


 夜も更けて、子ども部屋の2段ベッドの下段に身体を横たえる。今日は俺がレクと混ざった一日目だ。いろいろ心配はあるが、希望もある。なんとかしなくちゃな。そんなことを考えながらぼーっとしていると、上段からささやくような声が聞こえてきた。


「ねぇ、レク。起きてる?」

「起きてるよ」


 そう返すと、フレアが上段からひょいと降りてきた。……懐かしいな。どっちが二段ベッドの上を取るかでフレアを喧嘩したな。すぐに言い負かされたけど。

 フレアは不安そうな顔をしていう。


「レク、わたし心配だわ。急に今まで変わっちゃったんだもの。このまま無理をしてレクが居なくなっちゃうんじゃないかって」

「男の成長は突然くるものなんだよ。それに大丈夫。俺は超一流の冒険者になる男だ。絶対死なないよ」

「本当に?約束できる?」

「約束できるよ。余裕をもって冒険もしているし大丈夫」


 すこし顔のこわばりがほどけてきたフレア。歪な笑顔を見せてくれる。納得はできていないだろうが、ひとまずは信じてくれたらしい。


「ねえ、レク。久しぶりに一緒に寝ていい?」

「いやだ。フレア寝相が悪いんだもの」

「我慢しなさい」


 横っ腹にぽすりとこぶしが刺さった。


「そういえばレク、この前ね。商会の用心棒をしているバルゼさんが事務方のパドさんに告白した話知ってる?」

「えぇ。野獣と少年じゃん」


 用心棒のバルゼさんといえば、赤銅色の筋肉質の女性だ。逆にパドさんは女の子として生まれたほうが良かったと周りに囁かれるような華奢な男性だ。


「うん、そうなんだけどね。パドさんったら真っ赤になってよろしくお願いしますって」

「おめでとう!」


 そんな話をしているうちに眠りについた。

 翌朝、起こしに来たシスターテレサにこの年になって同衾していることに、あきれたような目をされた。

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