ユリアと屑
誉れは浜に捨てました。
中庭でユリア姫様とお茶をすることになった。
「レク様、お会いしとうございました」
ユリア姫様に抱きしめられる。距離が近くありませんか。恥ずかしいです。
「ユリア姫様、その……近いです」
「もう、レク様。お兄様からお話はうかがいましたよ。お嫁さんにしていただけるのでしょう。ユリアとお呼びください」
怒っていますよと表現するために頬を膨らます。ユリア膨らんだ頬を突いた。
「もう、レク様ったら」
「ごめんよ、ユリア。正直ユリアのこと絵本のお姫さまみたいだって思っていたから、婚約者になってくれて嬉しいよ」
「レク様、今のはちょっとどきっとしたので許してあげます」
なんの話をするべきだろうか。まあ、お互いの理解を深め合うことが大切か。
人と会話することが少なかった俺としては難しい課題だな。
「ユリアって趣味がある?俺の趣味は……モンスターを倒すことかな」
「まあ、超級冒険者ともなると戦闘を趣味と言えるのですね。私の趣味は本を読むことですかね」
「あ、いいね。俺も本を読むのが趣味だったよ」
「えっ!そうなのですか?レク様はあまり本を読まれる環境になかったと思っていましたが」
「昔は本を読んでいたよ。あー。信じてもらえるか分からない話をしてもいいかな」
「はい。私はレク様のことをもっと知りたく思います」
ユリアは目を輝かせる。今からする話を考えると気が重くなる。
「レクの中に俺がいるんだ。レクと俺は深く混じり合っていてどちらがどちらなのか分からない。俺は本を読むのが好きだったよ。図書館で本とか借りてたし」
「それは、二重人格ということでしょうか」
ユリアは真剣な顔をして聞いてくれる。
「それは違うかな。レクとしてだけ生きていた僕がいて、別の世界で生活していた俺がいる。それが蛋白の月の14日の朝に混ざり合ったんだ」
「別の世界ですか?」
「うん。別の世界。そこには科学って技術が発展していて、様々なことに使われていた。軍事や交通、遊戯にいたるまで。それでね。その遊戯―――ゲームっていうんだけど、それがこの世界によく似ているんだ。人類が滅びかけた時代、君が勇者となって人類を救えっていう物語を体感するゲーム」
「レク様について少々調べておりましたは、ある日を境に急激に強くなられたと、その理由が―――」
「それがそのゲームってやつとよく似ているんだ。ゲームで手に入れた技術を利用することができる」
ユリアは突拍子のない俺の話によくついてきてくれている。
「ちなみに人類が滅びかけた時代と仰っておりましたけど、それはどの程度のことをいっているのですか」
「それは今の時代でいうマジノまで人類が敗退している設定だったよ」
「マジノ……それではアーネシア王国は」
「うん。廃墟になって魔軍に占拠されていた。王族はマジノに逃げ延びていたみたいだけど」
ユリアは両手を組んで顔に当てるとじっと黙り込んだ。ユリアが何らかの答えを出すまで待つとしよう。こんな狂人とはいられないといわれればそれもそれだ。
「嫌な、嫌な想像ですが、レク様が居なくて最悪の道筋を辿れば、王国は滅んでいたかもしれませんわ」
「狂人の戯言かもしれないよ」
「将来の旦那様の言うことですもの。信じます。レク、いままでたくさんのことを背負わせてごめんね」
「いや、これまでもこれからも自分でやれる範囲のことだけやるだけだよ」
ユリアが両手で俺の手を包み込む。
「貴方は、もっと自分がやったことに自信を持つべきです。お兄様を救ってくださいました。私も命を救われました。そして、私を幸せにしてくれました」
どうしよう。9歳の女の子に少し泣かされそうになっている。
「まっ!俺は最強になる男だからな。心配はいらないよ。人類は魔軍に圧勝するよ。絶対」
えっ!どうしようもない子を見る目で俺のことを見ている。なんでだろう。
どうせだ。このままどうしようもない男になってしまえ。
「ところでユリア。他にも俺を好いてくれている女性がいるんだ。側室を認めてくれ。全員きちっと守るから」
「早速浮気ですか」
零下のような温度のまなざしをするユリア。
「まあ、調査しているときにそのような人物がいることは分かっていました。私がそこに割り込んだことも」
「はい」
「けれども、きちんと幸せにしてくださいね」
「任せとけ」
そういうことになった。
俺は最低な男だが、本気になってハーレムを作って見せる。そのためには誰から見ても分かる偉業をもっと積み重ねなければならない。頑張るぞ!




