王族の茶会
中庭の庭園で二人の美男美少女がお茶をしていた。
「それにしても、レク・カウネル殿にはどれほど感謝しても足りないよ」
「ええ。本当に。ユリウスお兄様のご病気が治ったのも、王冠が戻ってきたものレク様のおかげ。レク様のような方を英雄と呼ぶのかもしれません」
「英雄かい?」
「ええ。人を超える能力を持ち、時の運を持ち合わせている。そのような方を他にどのようにお呼びいたしましょうか」
ユリアは笑って答える。ユリウスは真剣な顔をして尋ねる。
「ユリアは彼をどう見たのかい?」
「ご年齢の通り幼いところのある方だと。反して、戦い方は老練。彼の逆鱗に触れなければ彼と敵対することはないでしょう。あと、お兄様のことを非常に評価しておりましたわ」
「彼の逆鱗は何だと思う?」
「身の回りの人でしょう。それが理不尽に傷つけられたとき容赦はないように思います。彼は孤児院の家族のことを、コレントの都市のことを大切そうに話していたから」
「なるほど。あとなぜ僕なんかの評価を?最近まで病床に臥せっていた王子でしかない僕を」
心底不思議そうな顔をしてユリウスは尋ねる。ユリアは紅茶を一口飲むと真剣な顔をした。
「お兄様なら国をまとめて魔軍と戦ってくれるからだといっておりましたわ。彼もお兄様や私のように魔軍が蠢動しているように感じているようです」
「そうか、ミスリル冒険者の彼がいうならなおさら結束を固めないといけないな。それに魔軍との戦いには彼の力が必要だ」
「彼は自分自身の意思で魔軍との戦いに挑むでしょう」
ユリアはコップの縁を指でなぞった。
「レク様は、真剣に魔軍との戦いに備えているように思えます」
「もうそこまで見据えて行動しているのが子どもで、今も城には遊び惚けている大人がいるなんてどうしようもないな」
そこまで話していると、一羽のフクロウが中庭に飛び込んできた。フクロウは平を逆さにしたような紋様が入った手紙をテーブルに落とした。
「これは、ユリア!」
「おそらく、レク様が放った小鳥が帰ってきたのですわ」
「例のレクくんが逃がしたという邪教徒のことか」
「はい」
「一応、魔導士たちに鑑定させておく」
中身は次の邪教徒のミサについての案内状だった。
ユリウスは国を蝕む邪教徒を一掃できる良い機会だと、我が国最高の冒険者に招集をかけた。
そんな中、ユリアは考えていた。レク様はどうしてこのような結果になると分かっていたのかしら。偶然?いいえ、あのように森賊に容赦をなさらなかったのだもの。何か考えあってのことだわ。
話してみると、同い年の子どものような幼さをみせるところのあるレクは、熟練した戦い、邪教徒への謀略、時折みせる大人びた表情や、覚悟を決めた顔。予想もしない様々な面を見せてくれる。
ユリアはどんどんレクのことが気になっていくのであった。
「レク様、ユリアはレク様にまたお会いしとうございます」