カウネルの領地
早速、役人たちを連れて北西のカウネルに向かうこととなった。
夕暮れの中、牧歌的な景色が広がっている。主産業は農家らしい。
「ふむ。このなかでカウネルでやりたいことがあるやつはいるか」
「はい。まずはこの領地にどれだけの領民がいるか把握したほうが良いかと存じます」
「お前。名前は?」
「……レイリと申します」
名前の通り怜悧そうな見た目をしている。他の役人たちに比べて目の色が怒りに満ちている気がする。
「レイリよ、お前ならこのカウネルを運営できると思うか?」
「ご領主さまが私の政策にご許可をいただけるのであれば、してみせましょう」
「そうか。レイリよ。すべてお前に任せた」
「は?」
重かった金貨四千枚の入った袋をレイリにわたす。
「お前が思うように領地運営をしてみろ。天災があったなら見逃すが、五年後、その四千枚の金貨が減っていたら、お前を領地運営から外す。できるか」
「やります。やらせてください」
彼の中でなにか物語が始まった気がする。
「俺は冒険者の領主だ。だから俺は俺ができるやり方。モンスター討伐でこの領地に貢献する。頼んだぞ」
こうして、レク・カウネルとしての生活が始まる。
今日はもう遅いので寝るとする。古びた領主館の各部屋をとりあえず割り振って寝ることにした。役人たちの家はまた明日探してもらうとしよう。
俺は堂々と寝室を確保して、久々にベッドで寝た。
朝、レイリの指示に従って仕事をすること、自分たちの家を探すことだけ指示をした。
俺はモンスター討伐だ。近くの冒険者ギルドに向かう。閑散とした冒険者ギルドだ。
あまり期待せずに、掲示板を見る。サイクロプス、サイクロプス、オーガ、オーガ、ゴーレム、グリフォン、ゴーレム。魔境かな。俺はマップで目撃地点にピンを刺していく。片っ端から依頼票をはぎ取る。
緑色の髪をした三つ編み受付嬢に提出した。
「さすがにこの量は……実績を確認いたしますので冒険者プレートを提出してください」
しばらく冒険者プレートを調べていると、何か驚いたような顔をして何度も書類を確認する。
「確認できました。冒険者レク様ですね。アーネシア王国支部ギルドから超級冒険者である、ミスリルプレートに昇格させるよう指示が来ています。今すぐ手続きをいたしますので、少々お待ちください」
ギルドの奥に走り去る受付嬢。しばらくして、水色の透き通った冒険者プレートを持ってきてくれる。
「私カウネル冒険者ギルドのミーヤと申します。この国初の超級冒険者の誕生に立ち会えて光栄です」
「どうもありがとうございます」
「先ほどの依頼票を受理しておきますね」
さあ、狩りの時間だ。このあたり一帯のモンスターはスライムに至るまで倒さなければ、領民も困ることがあるだろう。
俺は冒険者領主としての仕事を始めることにした。
2日後の夕方。
いやー。大変だったね。ゴブリンもなんか繁殖していたし。でもマップで目につくとこひたすら回ったから討ち漏らしもほとんどないだろうし。これでカウネルの平和は当面守られるだろう。レベルは2も上昇した。カウネルの冒険者は済まないと思っている。
俺は冒険者ギルドにいくと、必死の形相をしたレイリさんに詰め寄られた。
「領主様どこにいかれていたのですか!」
「領民の危険を減らすべくこのあたりのモンスターを掃討していたのだ」
「それは……ありがとうございます。ではありません、王城からレク・カウネル様に王城にこられるように指示が来ています。明日朝、すぐお向かいください」
「わかった」
冒険者ギルドの受付に行ってどっさりと討伐証明を提出する。ひきつった顔をしたミーヤは鑑定部の人を呼んでカウンターから持って行かせた。
「あの量とモンスターをおひとりでこなすのは無理ではないかと思っておりましたが、流石超級冒険者様です」
「いえ、強力なモンスターもおりませんでしたから依頼の分はそう苦労いたしませんでしたよ」
「依頼の分は?」
「討伐依頼にはありませんでしたが、ゴブリンが大分繁殖していました。そちらを探す方が大変でした」
「ゴブリンの方が苦労したといえる冒険者は少ないでしょうね。あっ。確認が終わったようです。こちらが報奨金となります」
受け取ってカウネルの領主館に帰った。寝室には大きなベッドがある。
いやっほー。飛び込んでごろごろしてみる。落ち着かない。
目をつぶって、息を整える。気づかないうちに寝ていた。