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姫様の野営

 野営の時間、俺はたじたじになっていた。

 ユリア姫様のご夕食にお招きされてしまったのだ。俺としてとっととご飯を食べて寝たかった。流石に無視はできない。


「そうですの。レク様もお肉がお好きなのですね。私のお兄様方もお肉が好きというのが多くて、やはり男性はお肉が好きなのかしら?」

「個人差だと思います。肉よりお菓子が好きだという人にもあったことがありますから」

「ですよね。私もお菓子の方が好みですわ」


 食事は終わっているのにユリア姫様のトークが止まらない。これは何の思惑で開催されている場なんだ。


「よろしければ、コレントの都市にある菓子を持ってきております。お食べになられますか」

「そうなんですの?是非!」

「なら毒見の先のメイドさんを」

「レク様から頂くものに毒見など必要ありませんわ。レク様がその気になれば、私を殺すことだってできるのですから」

「あまり物騒なことをいわないでください」


 アイテム欄からワッフルを取り出して、渡す。


「まあ、熱々。まるで焼きたてみたい。これはどういうからくりですの?」

「知らず知らずのうちに物を仕舞う魔法を覚えたんです。エルダーリッチとの戦闘中にも大量の槍を取り出してぶつけていた、あれです」

「まあ、ステキな魔法おかげで作りたてのお菓子が食べ放題ですもの」


 小動物のようにワッフルをちょこっと口に入れるユリア王女。


「まあ、かりっふわっと優しい甘さがしておいしいですわ」

「そうでしょう。家の子たちもお気に入りなんです」

「家の子たちですか?」

「ええ、孤児院のものなので」

「そうなんですの、孤児院の。孤児院では10歳までに道を決めて院を出ることになっていると聞き及んでいますが、レク様はもう出ていらっしゃいますの」

「いえ、まだ9歳なので孤児院に住まわせてもらっています」

「ご兄弟はいらっしゃいますの?」

「ええ、たくさん」

「羨ましいですわ。うちも兄弟はたくさんいても仲が良くありませんもの。レク様を見ていれば家族が好きって伝わりますもの」


 なんだか照れる。恥ずかしい。


「そうですか。なんか恥ずかしいですね」

「恥ずかしいことなんて、何もありませんわ。そういえば、私にも仲のいい兄がいるのです。ユリウスお兄様なんですけど、レク様のおかげで病気が治ったと聞いておりますわ。ありがとうございます。もし病気が治っていなかったらユーレク兄様が王になられていたと思いますわ」

「はっはっは。私は依頼があってそれを解決したまでですが、ユリウス様が快癒なさったこと嬉しく思います。ユリウス様なら立派な王になられると思います」


 私はユリウス様を応援していますよ、とそれとなく伝える。


「……どうしてユリウスお兄様が立派な王になられるとお思いになるのかしら?」

「私も冒険者として活動していると、魔軍の蠢動を感じています。今は世界が総力を挙げて魔軍との戦いに集中するべきだと思います。ユリウス様ならそれを可能にできると考えているからです」


 大分踏み込んだことを言っているが俺は大丈夫だろうか。不安になる。

 政治の場は絶対に向いてないな。


「そうなんですの。私も同じ考えを持っているのでレク様が同じ考えをお持ちであることに驚きを隠せませんでしたわ」

「そうなんですか。よかったです」

「よかった?」

「ひとりでも多くの人が魔軍に注意を払ってくれて、ですね」


 何やら真剣に考え込むユリア姫様。彼女の中では俺はどのような存在になっているのだろうか。せめて、敵としては認識されていませんように。


「レク様、夜遅くまでお相手頂いたこと感謝いたしますわ。ありがとうございます」

「いえ、有意義な時間でした。ありがとうございます」


 ああー。疲れた。やっと寝られる。

 俺は俺用に設置してもらえた軍幕に潜り込むとアイテム欄から毛布をくるまった。

 おやすみなさい。

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