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ゴーレムとグリフォン

 さて続いて魔道ゴーレムだ。夕方になりつつあるが『システム』で明度を上げてしまえば、あら不思議、日中のように辺りが見える。


 この世界の魔道ゴーレムEMETHと書かれている訳でもなく、円●石から召喚されるわけでもない。イメージとしては身体の各箇所にCPUを埋め込んだ機械だ。なので、そのCPUとなるコアを見つけて破壊すればいい。


 俺は『スキルツリー』を開いて『魔力視』を習得した。文字通り魔力の痕跡を見ることができるスキルだ。一部モンスターにはこのスキルがないと対応が非常に面倒になる。だからこれは無駄遣いにならない……はずだ。


 疾風の魔法を掛け直してゴーレムの発見場所まで行く。あれ?いないなと思う。ちょっと休むつもりで近くの岩に腰かけるとそれがゴーレムとして起きだした。イ●ロックかな?ゲームではのっさのっさと歩いていたから完全に油断していた。


 魔力視を使うと体の各箇所が光って見える。鈍重な動きでこちらを押しつぶそうとしてくる。ジャスト回避を決めた俺は右足にあるコアを緩やかな時間の中で確実に翡翠の剣で破壊する。そうしてそのまま後ろに回り込むと、大跳躍で後頭部に張り付いて、後頭部のコアを破壊。よし。くっついたまま降りてわき腹にあるコアを破壊。


 ぶるぶるとゴーレムが動き出したので自ら蹴り飛ばして、距離を取った。あのままくっついているとダメージを受けたことだろう。ゲーム時代でも思っていたが理不尽。どういう理屈なのだろうか。低レベルのゴーレムのコアは五つのはずだ。後のコアは、右腕と、ああ、左足の裏か。


 何度も言うがゴーレムは鈍重だ。距離を取ったら魔法の詠唱が楽にできる。ゴーレムより速く動けたらだが。距離を取って風護の魔法を唱える。


 ゴーレムの周りをまわりながら攻撃を誘発する。右腕による押しつぶし攻撃が来たので、大きく避けて、攻撃後の硬直の間にコアを破壊。また、ゴーレムの攻撃を誘発して踏みつぶし攻撃が来ると、自らゴーレムの足の下に行って翡翠の健を突き立てた。もしかしたら、風護が発動するかと思ったけど、その前に倒せたか。


 まだ日は沈み切っていない。……まだ行けるか。俺はこの勢いに乗ってグリフォン退治の場所まで行くことにした。ゴーレムを退治した場所から東に行った海の見える岸壁にその廃塔はあった。ゲーム時代には魔物たちに占拠されていて、ちくちくと遠距離攻撃されたり、ハーピーに連れ去り攻撃を受けて、塔から投棄されてそのまま死んだりするダンジョンだったが、さてどうだ。


 恐る恐る門をくぐる。ハーピーやホブゴブリンアーチャーどもは……いないな。安心した。それならこの勢いでいこう。ゲーム時代に倒したグリフォンと同じならこの塔の天辺にグリフォンの巣があるはずだ。登りながら思い出した。ゲーム時代ここはダンジョンだったのだ。ダンジョンにはお宝がある。記憶を頼りに寄り道して、錆びたカギを拾い、宝物庫を開く。

 中には聖騎士の鎧とマントが入っている。聖騎士の鎧は今の皮鎧より性能がいいので試しに装備してみたが、ガチャガチャとして動きづらい、却下。マントだけを羽織る。青色のマントだ。……目立ちすぎじゃないかな。とはいえこのマント、魔方陣が織り込まれており物理攻撃を3%、魔法攻撃を6%カットしてくれるものだ。装備しない手段はない。


 取るものを取ったので、天辺へと急ぐ。空は藍色になっているので『システム』で明度を更に上げる。海を見下ろしながら塔の外壁を伝う螺旋階段を上っていく。ようやく天辺へとたどり着いた。金貨や宝石類の宝の山の中でそいつは眠っていた……グリフォンだ。グリフォンは大鷲の上半身と獅子の下半身を持ったモンスターである。一言でいうなら滅茶苦茶かっこいい。流石元の世界でもこの世界でも家紋に使われるだけの威厳を感じざるを追えない。

 鷹は昼行性だからね。眠いよね。俺は敬意を持って、翡翠の剣を振り上げると、頭をかち割ろうと叩き落した。ピエッとも聞こえる声を出して跳び起きた。

 すぐに状況を悟ると、威嚇の声を上げながらこちらを睨みつける。


 こちらを見定めるように俺の周りをまわるように歩くグリフォン、俺も相対するように体の向きを合わせる。突然飛びかかってくる。予兆はほとんどなかった。振り下ろされる鷹の爪は、こちらを引き裂かんとばかりに鋭い。


 ダッシュ回避からのジャスト回避決めて、緩やかなときのなかでファイアボールを唱える。ファイアボールをグリフォンの翼へと打ち込む。グリフォンの翼が炎上する。これで飛べないはずだ。


 警戒するようにじっとこちらを見据えるグリフォンにこちらから切りかかる。ふわっと後ろに飛び退いて、こちらの攻撃直後の隙を狙うようにこちらを食いちぎろうとしてきた。俺は翡翠の剣の先をグリフォンの嘴に引っかけてくるりと回る。ジャスト回避成功。グリフォンの首に翡翠の剣を突き立てて抉る。グリフォンが動き出す前に貫いた状態のまま剣を振り下ろした。噴き出す血、グリフォンの断末魔が聞こえる。まだ、アイテムウィンドウは出ていない。俺は距離を取る。


 しばらくしてやっと、グリフォンの嘴、グリフォンの羽根などの表示が出た。俺はひとつ息をついた。これで依頼は全部達成だ。グリフォンをアイテム欄に入れる。これはグリフォンの嘴をギルドに提出すればいい。


 さて、お楽しみタイムだ。俺は両掌を開くと、グリフォンの集めたお宝を次々と光の粒に変換していく。この時代でもあのアイテムはあるのだろうか、見える限りのお宝を収納してからアイテム欄を確認する。王冠、紅玉の首飾り、豪奢な剣……あった。飛行石だ。ラ●ュタではない。この石があったら特定の場所へと転移することが可能になるのだ。王冠はつけられる人が限られている。……なんだか嫌な予感がする。


 目的のアイテムが手に入って満足した俺は、もう休むことにした。夜も更けている。先ほどまでグリフォンの巣だったのだ。襲ってくるモンスターはいないだろう。


 水の入った桶をアイテム欄から出して、タオルを濡らして身体を拭く。

 それから、獣くさいのが気になるが、ボリュームのある鳥肉の串焼きを取り出して、三本ほど食べた。


 床が固いので複数枚の毛布を取り出して敷く。さあ、寝るか。

おやすみなさい。

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