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オーガとサイクロプス

 朝が来た。俺はフレアに対してどきどきしていたが、フレアは何もなかったかのようにふるまっている。なんだったんだ。


 朝食を食べた俺は、早速冒険者ギルドに向かう。さあ、レベリングだ。


 掲示板のそれも高ランク向けの依頼票を真剣に見つめる。サイクロプス、オーガ、グリフォン、魔道ゴーレム。この時代はまだ人類の生存圏がまだ安定しているから強力なモンスターが少ないな。もっと、バジリスク、ドラゴンゾンビ、エルダーリッチ、ヒュドラとかが居たら経験値的に美味しいだが、実際出たら大事になるだろうな。国が亡ぶかもしれない。


 残された選択肢の中で最短で回れそうなコースを選ぶ。この世界で巡回セールスマン問題に挑むことになろうとは。まあ、勘でコース選択するけれど。


 とりあえず、オーガ、サイクロプス、魔道ゴーレム、グリフォンの順番で依頼を受注することにした。アルファベットのLみたいなコースになるけどまあ妥当だろう。それにサイクロプスとオーガは人を食べる。急いだほうがいいだろう。


 この中で優先度低く、もっとも美味しいのはグリフォンだ。グリフォンの好物はなんとゴブリンだし、グリフォンは宝物を集める習性がある。ゲーム時代にはいった場所だが、現在でもあれらのアイテムはあるのだろうか。あるといいな。


 べりべりと依頼票を剥がして、イリス姉さんの受付にもっていくと、イリス姉さんは呆れた表情で俺を迎えた。


「レクくん。普通は一件ずつ受注するものなのよ」

「各モンスターの生息場所も近いですし、まとめて討伐しようと思いまして」

「どの依頼も竜を討ったレクくんなら心配のいらない依頼ですね。分かりました。受理します」

「ありがとうございます」


 どうせやるならさっさと片付けてしまおう。


 俺はオーガが出たという坑道を目指して走った。ハヤブサの指輪と疾風の魔法のおかげで昼前までにつく。坑道の出入り口には炭鉱夫達がいて、厳重に出入り口を封鎖している。


「こんにちは。冒険者ギルドの依頼を受けて、オーガの討伐に参りました中級冒険者です」


 子どもがきたことにぎょっと驚く炭鉱夫達。そして首下に輝くシルバープレートを見てさらに驚く。炭鉱夫の代表らしき人が一歩進み出た。


「……本当に任しちまっていいんだな?」

「お任せください。みなさんは、私が入った後、もう一度出入り口を封鎖してください。討伐した後で声を掛けますので」

「……分かった」


 声に葛藤が乗っていた。子どもに危険なことをさせること、その子どもが一人前の冒険者であるから任せるべきであることが入り混じったのだろう。


 炭鉱夫達が協力して、坑道を塞いでいる障害物を除けてくれた。


「それでは行ってきます」

「気をつけてな」

「はい」


 坑道内に入る。腐臭がここまで漂ってくる。いやだなあ。

 アイテム欄からカンテラを出して腰のベルトにつけた。さらに『システム』を開いて明度を上げる。これで不意打ちはないだろう。

 坑道の奥に向かっていると、より腐臭が濃くなっている。奥からぼりぼりとナニカをかみ砕く音が聞こえる。あれだな。


 そっと近づくと、案の定オーガが人肉をむさぼっている。周りには食べ終わった骨が散らばっている。くそったれが。

 俺は走るとオーガの首筋に翡翠の剣をぶっ刺した。蹴りを入れて剣を抜く。たまらず悲鳴を上げるオーガ、貫かれた痛みに乱雑に振り回される手足。近づくこともせずに、相手の手足の届かないところからファイアボールを打ち込む。

 熱さと痛みに悶えるオーガ、こちらなど見えていない。さらに振り回される手足にダッシュ回避を合わせて、ジャスト回避を決めた。緩やかな時の中でオーガの首を跳ねた。


 アイテム欄にオーガの首を入れる。


 来た道を引きしながら、生存者がいないか声掛けをする。……だれも答えない。

 封鎖された坑道の出入り口まで戻ってきた。


「すいません。今日来た冒険者です。オーガを討伐してきました。開けてください」

「おう。分かった。開けてやれ」


 しばらくして数人がかりで、坑道の封鎖を解いてくれた。アイテム欄からオーガの首を落とす。


「これが討伐の証拠です。あと、生存者は……」

「いい。覚悟していたことだ。ありがとよ」


 オーガの首をアイテム欄に入れなおす。ギルドに提出しなければならないからだ。

 間に合わなかったことにどうしても気持ちが重くなる。

 次はサイクロプスの討伐だ。急ごう。どうせやるなら、だれかを助けられた方が気持ちいい仕事になるはずだ。


 依頼の村に行く道中の森で活動している。依頼のサイクロプスを見つけた。速攻で足に切りかかる。足の健が切れたのか片膝をつく。大跳躍からの上段切りで首を切り落とした。レベル差が大きくなっているから、戦い方が雑になってきてしまっている。気をつけなければいけない。


 村に行き、依頼のサイクロプスを討伐してきたことを説明した。最初は信じていなかったが、証拠にサイクロプスの首を見せると腰を抜かしながらガタガタと信じてくれた。サイクロプスの首もアイテム欄に表示はサイクロプスの眼球になっている。意図してアイテム欄に保管しようとしなかったから討伐証明に必要な眼球だけが残ったのか。

 村人たちはこれで森に採取に行くことができると喜んでくれた。


 重くなっていた気持ちが少し晴れた気がした。

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