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孤児院でフレアと

 孤児院に帰る頃にはおれはレイセイニなれた。うん俺はレイセイだ。


「あっ!兄ちゃんだ!おかえり」

「兄さん、おかえりなさい」

「お兄ちゃん、おかえりなさい」


 ハインツ、ロイ、サナが俺の防具を引っ張る。おいおい俺の身体は一つだけなんだぜ。こんなにモテちゃあこまっちゃうよ。


「「「それで、お土産は」」」


 うん。分かっていた。お兄ちゃんは分かっていたよ。


「今日のお土産はな~。ご領主様もお食べになられるお菓子、マカロンだぞ。食後にみんなで食べような」


 やったー、と走り回るちび達。俺も一緒になって走りはじめる。鬼ごっこが始まった。俺は大人げなくこっそりとハヤブサの指輪を装備した。

 次第に3人で俺を捕まえられるかの勝負になっていった。

 俺は最強を目指す男なのでジャスト回避を決めて華麗に舞った。


「なに、馬鹿なことしているのよレク」

「あ。おかえりフレア。今日のお土産はお菓子だぞ」

「わ、わ。やった。いつもありがとうレク」


 俺はあえなく三人のちび達に捕まった。ワシャワシャと三人の頭を乱してやる。最強への道は程遠いらしい。


孤児院の中に入る。


「レクお帰りなさい。外での騒ぎがここまで聞こえていましたよ」

「シスターテレサ、ただいま。なかなか盛り上がったよ」

「そのようね。さあ、ご飯にしましょう」

「あ、シスターテレサ、食後のお菓子を買ってきたから一緒に食べよう」

「あまり贅沢を覚えるべきではありませんが、せっかくの好意ですからね、一緒に食べると致しましょう」


 俺は知っている。シスターテレサは大の甘党だ。

 祝祭日に孤児院でクッキーを作ったときの試食する顔なんか、もう蕩けているとしかいいようがない。


「はい、ありがとうございます」


 みんなが食卓に着く。


「我々を慈しんでくださっている女神アレイアよ。わたしたちに生きるための糧をお与えくださったことに感謝します」


 目の前には柔らかなパンと肉の入ったスープ。孤児院での生活も随分と変えてしまったものだ。とはいえ、俺のモチベーションのためにも食生活には妥協はできない。


 食事は俺の冒険話で盛り上がった。竜に会ったというとみんなが目を輝かせて話を聞いていた。

 食事を終えたころ、俺はこっそりとアイテム欄からマカロンを取り出す。やはり焼きたてのほうが幸せの味がするからだ。

 シスターテレサとフレアは遠慮しつつも幸せそうに食べて、ちび達はワイワイと争奪戦を繰り広げていた。


 夜も更けて、ちび達に桃太郎を聞かせながら寝かしつけた。アンコールがあって三度も話した。


 俺もベッドに横になる。


「レク。失礼するわよ」


 ベッドの上段からフレアがひょいと降りてきた。

 寝転がっている俺の隣にフレアも寝る。


「レク、昨日の夜なんだけど。レクが居なかったから心配だったわ。やっぱり毎日帰ってくることはできないの?」

「うん。できないんだ。いま戦いたいモンスターと戦うためにはどうしても距離が必要になるから、これから受ける依頼では日帰りでとはいかないと思う。旅先でトラブルに巻き込まれることもあるだろうし、約束できないんだ」

「じゃあ、他の約束をしなさい」


 フレアが俺の指に自身の指を絡めた。ちょっとフレアさん、俺どきどきしてます。


「どれだけ時間がかかっても私たちのところに帰ってきなさい。私はレクのお姉さんなんだから」

「俺の方が先に孤児院にいたんだ。俺がお兄さんじゃないか?」

「レクはばかだもの。私はお姉さんよ。それで、約束はどうなのよ」

「約束するよ。俺はちゃんと帰ってくるさ」

「うん、約束。約束したから寂しいのも我慢してあげる」


 何かいうべきか悩んだけれど、何もいうべきではない気がして。

 フレアの手を握ってやる。


「ばーか」

「はいはい、ばかですよ。フレアも明日仕事なんだろ。寝るぞ」

「うん」


 どきどきしていたが、目をつぶってなんとか眠る。

 暗い海の中、二人で手をつないで浮かんでいる夢を見た。

 なんでだろう。俺のレクの部分が不安に感じているだろうか。

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