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妖気の森でレベリング①

 都市コレントの門から出て、街道を西方へと向かっていると妖気の森が見えてくる。ねじ曲がり、紫がかった木々が並ぶこの森は、俺としても不気味に感じる。

 まるで昔見た絵本に出てくる魔女の住む森のようだ。


 いつものレキならこれから妖気の森の浅いところでスライムのみを狙って討伐することになるのだが、今日からは違う。


 まず、確認しなければならないことがある。

 メニュー画面が開けるかどうかである。


「スタート、スタートボタン、メニュー……あっ」


 思いつく言葉を言い並べていくうちに見慣れたウィンドウが表示される。『パーティー』『マップ』『スキルツリー』『アイテム』『システム』『ヘルプ』の項目が表示される。早速『システム』を開いてみる。難易度はノーマルになっていて設定変更できないらしい。視点をサードパーソンへと切り替える。BGMなども設定できるらしいが、当然音楽なんて聞こえてこない。


 自分のステータスを確認するために『パーティー』を開いた。―――これはひどいステータスだ。主人公は大人だったし、レベルも8~11と職業ごとに異なっていたから戦える状態であった。しかしレクはまだ子どもしかも職業というものもあえていうなら孤児である。レベルは2、ステータスも全体的に低い。当然といえば当然である。


 ため息をついて、心機一転。

 早速『スキルツリー』を開いてみる。樹形図ように広がったスキルの一覧が表示される。いままでスライムの討伐を行ってきたから、いくらかスキルポイントがたまっている。ツリーからパリィのスキルを取得する。


 とりあえず、準備が整ったはずだ。後は実践を交えながらゲームとの差異を確認していかなければならない。


 妖気の森へと足を踏み込む。紫がかった枝葉の間からうっすらとした光が差し込んでいるが、やはり薄暗い。

 試しに『システム』開いて、明度を上げてみると、見えやすくなった。……これはありなんだろうか。いや、使えるものは使っていかなければならない。それくらい時間がない。


 少し歩くと、目の前に青い丸みを帯びた敵―――スライムが現れた。これがレクの最初に負けた敵である。主に突進を利用した攻撃をしてくる。まともに受けると大人でも赤くなるほどの威力がある。


 ぐぐっと力を貯める敵に小盾を構える。ポンっと跳ねたスライムに対して、小盾でパリィをする。ひるんだ敵に短剣を突き立てる。

 今まで必死によけては短剣で戦っていた敵が一撃で倒せた。

 パリィ成功後の攻撃はクリティカル判定になるからだ。


 べしゃりとつぶれたようになった観察する。ウィンドウが表示されてスライムの核と表示されている。恐る恐る手を伸ばす。すると、手が触れる前にスライムの身体が光の粒になって消えた。

 メニューの『アイテム』にスライムの核が表示されているのを確認した。

 よかった。ゲームと同じ力を持っている。現実には表示やストレージなどあるわけはなく、バックにスライムの核を集めていたが、これで効率が段違いだ。


 少々森を探索していると、またスライムが現れた。

 今度は別の技を確認しておきたい。

 突進してくるスライムに対して、ぎりぎりでの回避を行う。瞬間、世界が止まったように遅くなった。安心した。ジャスト回避もあるらしい。止まったような世界の中で、自分だけが動き、スライムの核に短剣を叩きこんだ。

 倒れたスライムをストレージに入れる。


 スライム、スライム、スライム、スライムと立て続けに現れる青丸たちと戦い続けていると、ついに目標にしていたホーンラビットが現れた。

 ホーンラビットには鋭い角が生えており、ウサギとしての跳躍力を利用して相手を貫いてくるモンスターである。


 今までのレクは、ホーンラビットが現れたときには、死ぬかもしれないため撤退していたが、今日からの俺は違う。

 こちらを貫こうとしてきた角を横殴りにパリィ、無防備にさらけ出された首筋に短剣を刺した。

 倒れるホーンラビット、期待を込めてホーンラビットの死体の表示を見る。燦然と表示されるホーンラビットの肉とホーンラビットの毛皮。


 目標にしていた食生活の改善を第一歩だ。俺は勝利したのであった。


 そこで終わるわけはなく、俺はレベリングのため、ひたすらスライムと時々現れるホーンラビットを倒していった。

 日が傾き、明度を上げた視点でも暗くなりはじめたころには、レベルが5に上がっていた。


 ストレージにはスライムの核が五十八個、ホーンラビットの肉と毛皮が十三個になっていた。

 俺は『スキルツリー』を開くと『ダッシュ回避』に必要なスキルポイントが貯まっていることを確認して、コレントの都市に帰ることにした。


 まだまだ都市を魔軍の襲撃から守るには力が足りない。しかし、今日一日で確かな成長があったことに充足感があった。

 都市を歩いているときは使命感でいっぱいだったが、今だけは少し足取りが軽く感じた。

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