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コレントのお嬢様 カブ

 客間から出た俺は、メイリスさんに案内されてアリアの部屋に向かった。


「お嬢様。レク殿が来られております」

「入りなさい」


 柔らかな髪が夕日に映えている。人形のような華奢な体つき。お嬢様だなあ。会うたびに思う感想だ。ただ、全体の印象を裏切るように目だけが好奇心に輝いていた。


「レク様、お久しぶりです」

「お久しぶりというほどではありません。あったのは一昨日の朝ですよ。アリア様」

「まあ、窓を見るたびに私はレク様を想っておりましたのに、そのように仰るのですか」

「またまた。ご冗談を。今日はせき込んでおりませんが治療薬が完成したのですか?」

「冗談ではありませんのに」


 膨れたような表情をするアリア様。かわいい。……おい、俺よ相手は9歳だぞ。


「ええ。レク様のおかげで薬が完成し、病気も回復の兆しがみられております」

「では、あまり長くお邪魔するわけにいけませんね。早速今日のお話をしましょうか」

「お話は魅力的ですが、冒険者のレク様がこのように領主館を訪ねられるのはめずらしいことなのではありませんか。なにか、あったのでしょうか」

「ええ。私がマークス様にお願いしたいことがあって領主館を訪ねさせていただいたのですよ」

「お願いしたいこと……ですか」


 考え込むように頬に指を当てるアリア様。


「不安にさせてしまうかもしれませんのであまり気乗りはしませんが。もしかしたら魔軍の襲撃があるかもしれないので、コレントの都市の防備を当面の間強化してほしいといったお願いですね」

「……レク様。残念ながらそのお願いは難しいかもしれませんね。ここだけの話ですが、我が家の領主軍の多くは連合軍として何らかの作戦に従事しているようです。今魔軍の襲撃に遭ったら、都市コレントには甚大な被害が出てしまうでしょう」

「ご安心ください。アリア様。マークス様のおかげでその作戦は成功したようです。じきにコレントの軍人さんたちも帰ってくると思います」

「―――そうですか」


 何かとんでもないことを聞いたようにその輝く玻璃のような瞳を輝かせるアリア様。どうしたのだろうか。


「レク様、やっぱり私はレク様のお話が聞きたいですわ」

「そうですか。なら今日はどの話にしましょうかね」


 ぽんっと手を合わせて笑顔でそういってくれる。うん笑顔が一番いいな。


「昔々のことです。おじいさんが植えたカブが、とっても甘く大きな、とても大きなカブになりました。おじいさんは、「よいしょ、よいしょ」と掛け声を掛けつつカブを引き抜こうとしますが……」


 目を輝かせてお話を聞いてくれる。アリア様は聞き上手だな。

 動物を呼んできたところで大笑いしてメイリスさんに注意されたが。

 楽しんでもらえたようで何よりだ。

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