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領主館での成功

 次の日は俺もアイスビッシュ砦の整備作業を手伝おうとローレン将軍に申し出たが断られた。


「そんな作業よりも、君がするべきこともあるのではないかね」


 ローレン将軍は懐に手を入れると、手紙を取り出す。


「マークスの奴に手紙を書いておいた。コレントの都市に戻って渡しておいてくれ。各領主軍についてだが、アイスビッシュ砦の整備作業が終了次第。再編成を行う。その際には、一度都市コレントの兵士は返すことを約束しよう」


 そういうことになった。

 まあ、こちらとしては気が楽でいい。

 当初の予定通り三日目にしてコレントの都市に帰れそうだ。


 正直なところ、自身は団体作業とか向いていないので安堵した。

 ところで、気になることがあった。きらきらとした目でこちらを見てくるまるで、そう―――英雄を見る目だ。

 さっきからすれ違う兵士たちから気合の入った挨拶をされる。


「おはようございます!レク殿、昨日の戦闘ではお世話になりました!」

「レク殿は昨日の作戦では、大活躍されていたそうですね。よろしければ今夜お話をお聞かせ願えませんか!」

「いえ、私はこれから都市コレントの領主マークス様に報告に参らなければならないので……」


 俺はローレン将軍からの手紙を理由に逃げることにした。自分でやったことが如何にすごい他人に説明するなんて、勘弁だ。

 俺はカラータイマーが点灯したウル●ラマンのようにさっさとアイスビッシュ砦の連合軍を去った。ッシャ。


 来る時と同じように『マップ』を開きながら妖気の森を突っ切る。道中遭遇する敵はホーンラビットを除いて無視をする。アイテム欄にたまっていくホーンラビットの肉ににんまりとする。


 夕方になるころにはコレントの都市についた。明日の朝伺うべきか悩んだが、俺はメインストリートを通って領主館へと向かった。


 玄関の前で警備をしている衛兵さんに声を掛けた。


「すみません。冒険者のレクと申します。マークス様にローレン将軍からの手紙をお渡し願いたく存じます」

「これはレク殿。マークス様にお渡しするようにいたしますので、少々お待ちください」


 よかった。衛兵にも名前を知ってもらえていたみたいだ。なんだこの子どもは、ここはお前の来るような場所ではないわ。帰れー、みたいなことにはなりそうにない。

 衛兵さんがドアベルを鳴らすと、中からメイドのメイリスさんが出てきた。


「えっ!レク様。なんでコレントの都市に……」

「メイリス、こちらローレン将軍からの手紙だそうだ。至急マークス様にお渡ししてくれ」


 メイリスさんは驚いたような表情をするも、すぐに表情を改めて、手紙を受け取った。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 玄関前でアイテム欄の順番を捜査していると、すぐにお呼びがかかった。前回の客室に案内される。間もなくマークス様が部屋に入ってこられた。


「ローレンからの手紙を読んだ。活躍するとは思っていたが、まさか正味一日であのアイスビッシュ砦の攻略をするとはな。腰を抜かす思いだったよ」

「幸運に恵まれまして、戦場で活躍することができました」

「レク殿、謙虚は美徳ですが、あまり度が過ぎると傲慢ともなりますぞ。レク殿はこの何十年において比類なきご活躍をされている。それを幸運だからで済まされては、角が立つというものですぞ」

「分かりました。注意します」


 俺は、既に一般的な兵士や冒険者に比べて高い実力を持っている。これからは相応の威厳が必要になるのだろうか。自信がないなあ。

 

「それにしてもこの成果、ローレンも口が開く思いだったことでしょう。私もその場にいてレク殿の活躍を見たかったくらいですな」

「あのローレン将軍がですか。動じていないような様子で指揮を執られておりましたが」

「きっと、驚きを隠してのことでしょう。あれがどんな思いであったのかは今度会ったときにでも聞いてみるとしましょう」

「さて、マークス様。黄玉の月の14日に領主軍は間に合いそうですか」

「ええ。レク殿のご活躍によりアイスビッシュ砦の攻略なりましたから。ローレンも都市コレントの兵士をできるだけ早く帰還されるようにすると手紙に書いておりました」

「良かった」


 今日は蛋白の月の28日である。この世界のひと月は28日しかないので、明日が黄玉の月の1日だ。あまり時間は残されていない。

 俺ひとりの力では守れる人も限られるだろう。けれど、マークス様の協力を取り付けられた以上、事前の避難勧告や領主軍の配備などでより多くの人々の命を守れることになる。


「レク殿。レク殿は堅牢不落と名高いアイスビッシュ砦の攻略をなさりました。おかげでこちらも領主軍を十全に動かすことができます。レク殿が仰っていた、黄玉の月の14日の魔軍の襲撃、必ずや乗り切って見せましょう」

「はい、よろしくおねがいします」


 深く頭をさげる。少々偉業を成し遂げたとはいえ、こんな孤児の夢を信じてくださる。マークス様は懐の深いお方だ。


「さて、実はアリアがレク殿に会いたがっておりましてな。レク殿が来館したら必ず知らせるように言われているのです。よかったら会っていってやってくれませぬか」

「是非、私もお会いしたいと存じます」


 急にマークス様の目がカッと開かれる。何があった。


「レク殿。アリアを嫁にはやりませぬぞ」

「マークス様、私はまだ9歳です。そのようなことは早すぎます」


 親ばかだ。

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