表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/135

アイスビッシュ砦攻略前夜

 アイスビッシュ砦は妖気の森のさらに西に向かったところにある。そもそもコレントの都市が魔軍に対する最前線となりえる都市であるから、そこから先魔軍の勢力圏である西にアイスビッシュ砦もあるのだ。


 堅牢であると名高いアイスビッシュ砦を取り戻して、改めて魔軍との戦いにおける最前線の拠点を築こうしているのだろう。そのせいで……コレントの都市は魔軍に襲撃されるのだからたまったものではない。


 恐らく領主軍は妖気の森を迂回していっただろうが、俺はその必要がない。時折出てくるホーンラビット以外は無視して、妖気の森を直進した。ホーンラビットの肉は孤児院における重要な食料なので無視はしない。


 空が茜色に染まり、藍色に変わる頃、ハヤブサの指輪のおかげもあって、アイスビッシュ砦に到着した。砦から離れたところに連合軍が陣を張っている。侵入を防ぐための防衛柵、周りに兵士に巡回している。……これ話しかけづらいな。


 先にゲーム知識が正しいか確認をしておくか。俺は嫌なことを後回しにした。


 こそこそと、アイスビッシュ砦側面に向かう。草木で隠ぺいされていたがあった。ゴブリンが勝手に掘った出入口だ。草木を除けて中に入る。雑に掘られた短いトンネルがあって城内に入り込むことができた。これで確認は十分だろう。


 砦の外に戻って草木の隠ぺいを戻しておく。これで気づかないだろう。ゴブリンは適当なところがあるからな。


 改めて、アイスビッシュ砦攻略の連合軍の陣の入り口に向かった。当然兵士に呼び止められる。


「待て!ここはアイスビッシュ砦攻略連合の拠点だぞ。子どもが来るような場所ではない」

「俺は、都市コレントの領主、マークス・コレントの紹介によって来たものだ。紹介状がある。中身を改めてほしい」


 できるだけ威厳がある感じに言い放った。下出に出るよりかは話が通りやすいだろうと判断してのことだ。


「……分かった。紹介状をこちらに渡してくれ」

「どうぞ。これを連合軍の将に渡してほしい」


 子どもが軍の拠点に出入りするとか意味わからないよね。ごめんよ。

 紹介状を受け取った兵士は、困惑したように見ていたが、押されている印章に顔色を変えた。


「ローレン将軍に紹介状を改めてもらう。こちらでお待ちいただきたい」

「分かりました。よろしくお願いしたい」


 しばらく門の前で待つこととなった。なんとなしに門の中を見るとけが人も多く、士気が低いように感じる。ありていにいって活気がないのだ。アイスビッシュ砦攻略は困難を極めているらしい。まあ、魔軍の襲撃に領主軍が戻ってきていなかった以上、当分攻略はできないだろう。さて、どうすれば砦の攻略を早めることができるのか。


「お待たせしました。ローレン将軍が最奥の軍幕にてお待ちです。ご案内いたします」

「はい。お願いします」


 戻ってきた兵士は、相方に目で合図すると、相方も顎を引いて答えた。……これ、後ろから攻撃してくれとかいう合図じゃないよね。


 兵士に先導されて最奥に案内される。先の印象の通り負傷兵が多く、どの兵士も目が曇っている。いやな雰囲気だった。

 奥にある一番大きな軍幕についた。


「ローレン将軍。先の紹介状を持った少年をお連れしました」

「入れ」

「はっ」


 陣幕がめくられて、中に入るように促される。大きな机に戦略盤、幕の天井にはランプが点灯している。そして煙たい。ローレン将軍は煙草をくわえている。額に深いしわ、角ばった顔、そして眼帯。将軍と知っていなかったらマフィアのボスだと思っていたことだろう。


「お前がマークスがいっていた少年か」

「初めまして、ローレン将軍。冒険者のレクです」

「挨拶はいい。有能な人材を紹介すると書いてあったが何ができる?」


 マークス様、大分大きくでて書いてくれたんだな。なら、その期待に応えることが俺の責務だ。


「私にお任せいただけましたら、明日アイスビッシュ砦の正門を開いて見せましょう」


 面白いことを聞いたとばかりに片眉を上げるローレン将軍。これぐらい大きいこといったら聞く耳を持ってもらえるか?


「もしも、もしもそれが可能ならば戦況を変える一手となるだろうな」

「ええ、私にお任せくだされば可能です」

「一応、どうやってするつもりか、聞いておこうか」


 さあ、説得できるかどうか。でも、匙はとうに投げられている。


「本日、私はアイスビッシュ砦の周辺を偵察してからこちらに参りました。結果ゴブリンが掘ったであろう城内への進入路を発見しました。城の内側には敵もおりましょうが私であれば対応できます。侵入して内側からアイスビッシュ砦の正門を開いて見せます」

「ふうむ」

「失敗しても今日来たばかりの馬鹿な子どもが死ぬだけです。成功すれば戦況を変えることができます。是非やらせていただけませんか」


 しばらく黙って煙草をふかすローレン将軍。口から吐き出された煙が昇り、天幕の天井をついた。


「マークスの紹介もある。明日兵を正門へ集めてやる。やってみせろレク」

「ありがとうございます」


 想像以上の成果に舞い上がりそうになるのを必死に抑える。さすがに将軍の前でスキップとかしたら無礼討ちされそうだ。それにしても、こんなマフィアのボスみたいな人にいうことを聞いてもらえるなんてマークス様は何者なのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ