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冒険者ギルド

「我々を慈しんでくださっている女神アレイアよ。わたしたちに生きるための糧をお与えくださったことに感謝します」


 目の前に黒パンと具の少ないスープが並んでいる。たったこれだけじゃお腹がいっぱいになるわけがない。

 しかしこれがレクにとって当たり前の食事であることが記憶から分かった。

 周りを真似て黒パンをスープに浸して柔らかくしてから食べた。食事は味気ないもので食生活の改善を目標のひとつに入れることにした。


フレアがにんまりとした笑顔で近寄ってくる。


「あたしは縫製所に働きに行ってくるけど、レクは今日も冒険者ギルド?また怪我して泣いて帰ってこないようにね」

「うん。今日も冒険者ギルドにいってくる。今日からの俺は違うからな、見てろよ」


 初めて冒険者ギルドで働いたとき最弱のスライムに負けて帰ってきたことを茶化したようにいう。ムカついたのでフレアの赤髪をワシャワシャとかき混ぜてやった。


「ちょっとなにするのよ」


 フレアは俺の両手を払いのけると髪を整えだした。


「もう心配してあげてんのに。それに確かに今日にレクはいつもより子どもっぽいわ。腰のお友達を忘れてしまいそうなほど」

「短剣はこれから部屋に取りに行くところだ。フレアも針で自分を突かないように気をつけてな」


 院の個室に駆け込むと、相棒の短剣をベルトに差し込んで小盾を身に着けた。これで準備はよし。

 冒険者ギルドに行こう。


 孤児院を出て、朝日が目蓋をつらぬいた。ぼんやりとしてこのコレントの都市を眺めた。起きだして仕事に向かう人々、連なる家々から家族たちの声が聞こえてくる。あの日の地獄は嘘みたいだ。

 嘘にしてみせなくちゃいけない。俺がレクになった意味なのだろうから。


 メインストリートに面した大きな建物のひとつが冒険者ギルドである。カウベルのついた扉を押し開くと、カランと音が鳴った。ギルドにいる人々の視線が集まる。


「なんだあ、ちびっこ冒険者のお出ましじゃあないか」


 禿面で巨躯、大斧を背負ったこの男は冒険者のひとりだ。レクは初対面のとき本気で泣きそうになった見た目だが、親切にしてくれている冒険者のひとりだ。


「ダイケルさん、おはようございます」

「今日もスライムの討伐に行くのか?あんまり深くまで行くなよ」


 わしわしと頭を撫でられる。あんまりにも力が強すぎてぐわんぐわんと身体が揺れた。笑って他のパーティメンバーたちと冒険に出かけていった。

 いつもなら、掲示板の受付票の中から常時討伐依頼のスライムの依頼票を持っていくだけなのだが、今回はじっくりと依頼票を吟味する。

 何度も手に取ってきたスライムの討伐依頼票、ピクシーのドロップアイテムである妖精の粉の採取依頼、薬草十束の納品、ダイアウルフの毛皮の納品依頼等など、そして最大難易度の依頼はグランドスネークの胆の納品依頼が領主から出ている。


 レクの頃には分からなかったが、グランドスネークの胆は『ルーン戦記』では特殊なアイテムである。NPCが病気の治療に必要となるアイテムなのである。つまり、領主自身か周囲に病気の人がいるということだ。一応覚えておこう。


 よくよく吟味した後、いつものスライム討伐の依頼票を受付に持って行った。受付にはいつも担当してくれているイリス姉さんがいる。亜麻色の髪を後ろで束ねた、出来るって感じでいて優しそうなお姉さんである。


「よかった。レクくんがあんまりにも真剣に掲示板とにらめっこしていたから、スライム以外の依頼を持ってくるんじゃないかとひやひやしたわ。冒険は命が大事なお仕事だから、安全第一だよ。ただでさえ、レクくんは8歳なんだからスライムの討伐も危ないもの」

「イリス姉さん、先日9歳になりましたよ。それに『無理』はするつもりはありませんよ」

「レクくん。約束よ」

「はい、約束です」


 本当である。無理はするつもりはない。けど、俺がVRMMOでやれていたことが少しでもレクが出来るのであれば、これからの冒険は今までとは違ったものにできるだろう。


 イリス姉さんに依頼の受理をしてもらって、冒険者ギルドを出た。

 メインストリートは人の行き来が活発になっている。様々な人々の声が届いてくる。

 俺は都市から出る門へと向かった。今日の目的地は妖気の森である。ゲーム時代になかった場所ではあるが、レキとしての記憶がある。浅いところにスライムとホーンラビットがいる、ちょっと深くに入ればピクシーとゴブリンが出てくる。ここら辺では薬草の採取が可能になる。最深部になるとダイアウルフやハーピーがいる。今のレクでは一撃で倒れてしまうだろうエリアである。そしてエリアボスとしてグランドスネークがいる。


 まずはこの妖気の森の攻略を目指してみよう。

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