ゲーム開始前にゲームクリア
俺たちは一旦、アイスビッシュ砦に転移することにした。ローレン将軍にまた後でいってしまったからだ。
飛行石を投げて転移する。辺りが歓声に包まれる。ローレン将軍、ここに転移してくることを読んで兵士の配置をしていたな。
ローレン将軍が、前に出てきた。
「おかえりなさいませ。稀代の英雄た……ち」
アレイアを見て、ローレン将軍が固まった。誰だろうってなったんだろう。教会とかにあるアレイアの像は優し気な感じだったが、実際のアレイアはかっこいい系の美女だからな。
「あの……どちら様でしょうか」
「私はアレイアだ」
「魔王城で石化されていたのを助けてきた」
完全にローレン将軍が固まった。脳の処理量を越えたのだろう。
「アレイア……様」
周りの兵士たちとローレン将軍が一斉に膝をついた。
「どういうことだ……レク」
アレイアが俺に説明を求める。
「あー、人類の暗黒時代を救った女神として現代ではアレイアのことを信仰されているんだよ」
「信仰」
「そう信仰」
戸惑ったように答えるアレイア。まあ、自分が女神になったと知ったら驚きもするか。
「ローレン将軍。俺たちはどうしたらいい?このまま解散でいいなら、今後活動の中心となるカウネルに婚約者をつれていくつもりだけど」
「いえいえ、王国の城で戦勝会が開かれますから、どうぞそちらにお向かいしてください。伝言石ですぐにアレイア様のことも含めて報告しておきますから少々お時間を下さい。誰か椅子を!」
すぐに兵士が椅子を持ってくる。しばらく雑談をして待っていると、額から汗を流したローレン将軍が帰ってきた。
「それでは飛行石で王城へとお向かい下さい」
俺たちは再び飛行石を使って転移した。王城の石造りの部屋に移動する。人々が道を作るように両側に立って拍手をして俺達を迎えた。
仰々しいな。拍手のアーチの中をくぐって広間へと向かう。そこではパーティーの準備が行われていた。
陛下が話された。
「長い人類の歴史、それは魔王との戦いの歴史であった……」
陛下の演説が始まる。そういえば、ふと思い出したことがある。俺がこの世界で目覚める直前の光景はゲームクリア後の凱旋の光景だった。飛行石を使ったため、馬車に乗ってのパレードはなかった。……あとでパレードをやらされるかもしれないな。その光景の続きをみている。
まだ、主人公は登場していないはずだ。ゲーム好きなのにゲーム開始前にゲームをクリアしてしまったということを考えて、くすりと笑った。
まあ、まだまだやることは多い。嫁たちを幸せにしないといけないし、モンスターの脅威にさらされている人もいる。でもまあ今日だけはこの喜びに浸るとしよう。