魔王戦③
魔王は分身体を潰すと、自身が黒い霧に包まれる。俺は槍を投げ入れてみた。痛みにうめくような様子はない。無意味らしい。
「レク。魔王は?」
「これから本気の姿をみせてくれるらしい」
「本気の姿?」
「でかい黒い竜だ。気を緩めるな。一撃が重いぞ」
「はい」
いった通り、でかくて黒い西洋竜だ。早速とばかりに地面を叩きつけようと、腕を振り上げた。
「魔力防御!」
俺とクーデリカの魔力障壁を重ねる。回避不可の漆黒の大波が迫る。俺は過ぎ去ると同時に頭についている。逆鱗に向けて大跳躍からの突き刺しを行う。逆鱗にひびがはいった。
「あああああああああああ!」
痛みにうめく、魔王。逆鱗の周囲に防護の魔法が張られる。痛みに暴れる魔王。だから痛い時こそ隙をなくさないといけないぞっと。ジャスト回避を決めながら連撃を入れていく。
クーデリカ達も俺が十二分にヘイトを買っていることを分かって全力で攻撃に参加してくれている。
態勢を整えた魔王が息を吸う。
「ブレス!散会!」
全力で避けるように指示する。俺は疾風の魔法を唱える。ブレスが眼前に迫る。しかしハヤブサの指輪と疾風を唱えた俺には一歩届かない。ブレスを回避しつつ、接敵していく。それをみてブレスを吐くのをやめる魔王。だが、遅すぎる。もう射程圏内だ。息を吸おうとした瞬間、魔法防御のなくなっている逆鱗に再度突きを入れる。
「がああああああ!」
魔王は痛みに暴れたときの攻撃を利用されていることに気がついたのか、亀のように丸くなる。こんなパターンはなかったはずだが。気にせず。大跳躍から逆鱗に再び突きを入れる。ひびがより大きくなる。
俺を振り落とそうと、振り下ろされる腕にダッシュ回避を合わせて、逆鱗に攻撃に入れる。クーデリカ達も必死に魔王の身体に攻撃を入れ続けている。
魔王は真っ赤になった竜の瞳で俺だけを見ている。
「お前だ。お前さえ死ねば」
全身を使った突進をしてきた。おっこれも新しい攻撃パターンだ。横にも前にも避けられないだろう。しかし、当たる直前に後ろにダッシュ回避をした。当然のように発動するジャスト回避。俺は魔王の身体を大跳躍しながら、飛び越える。ちょっと危なかったかな。
「死ねばあああ!」
語彙力が少なくなっているぞ。魔王が爪を振るいその衝撃が迫ってくる。当然前方へとダッシュ回避。ジャスト回避でまた逆鱗に一撃を入れる。あと、一撃ってところか。
「お前さえ。お前さえ。いなくなればこの世界は!」
羽ばたこうとしている。うん?こんな攻撃もなかったぞ。もしかして逃げようとしている?俺は暴風の中、必死に近づいて飛び立つ寸前の尻尾を掴んだ。