魔王戦②
会話が出来るからって煽りすぎたか。ゲーム時代よりも攻撃が雑になっている。今も錫杖をこちらに突き入れようとしている。俺は首を横に倒してジャスト回避を発動する。両足を切った後、さらに挑発するために頭に大上段を決めた。
「ふざけるな!」
「退避!」
魔王の足元で地獄の鎌のようなものが現れる。それはどんどん巨大化していき、魔王の周囲を一斉に薙いだ。魔王の固有技だ。事前に距離を取っていたため回避できたが、直撃すればただでは済まなかっただろう。
鎌が眼前を過ぎるのに合わせて突っ込んだ。魔王はまたマシンガン的魔法弾を撃ち込んできていた。俺はダッシュ回避を合わせて突っ込んだ。スピードは先ほど見たので調整できた。ジャスト回避。ゆっくりとした時間の中魔法弾を避けつつ接近して、袈裟に切る。その振り下ろした勢いのまま一回転してもう一度袈裟切りをかます。
避けられないように錫杖を薙いできたので、美味しくパリィして、首に回転切りを入れた。固い。少ししか刃が入らない。
「いいだろう。少し、余の本気を見せてやろう」
分身体を創り出す魔王。
「皆、分身体を頼んだ。本体は俺が叩く」
マリアンヌが息を吸って、大楯と剣を頭上に構えた。
「うおおおおおおおおおお!」
分身体と本体のヘイトを同時に買ったマリアンヌ、俺はその隙に本体の鳩尾に突きを入れた。苦しかろう。
「かはっ!」
殺気と狂気に満ちた、魔王の視線が完全に俺をロックオンした。上等だ。ぶっ潰してやる。
魔王が手を振る。俺を包み込む魔力弾の檻になる。俺を目掛けて、連射される。一発だ。最初の一発をジャスト回避したらいい。俺は背中から撃ち込まれた一撃。本来なら避けられなかったであろう一撃。けど俺はゲームプレイヤーだ。サードパーソンなので確と見えていた。避ける。ジャスト回避が発動した。緩やかになる。その時の中、あらゆる角度から迫る魔力弾を避けて、弾いて、ときに無視してやる。
無傷で魔力弾の檻から出てきたことに眼を見開いている魔王。
「何なんだ……お前は……」
まだジャスト回避の時間が残っている。俺は魔王に近づいてその大きく開いた目に剣を突き入れた。
「があああああああああ!」
浅いな。剣があまり奥には入らなかった。だが、魔王には耐え難い苦痛だったらしい。しばらく、じたばたと錫杖を振るう、魔王に回避を合わせて連撃を入れていった。
しばらくして、無表情で魔王がいう。
「お前には本気の姿で対応しなければならないようだ」