魔王戦①
なんとかしてその扉を人が通れるほどに押し開いた。中に入ると、門が勝手に閉じた。中央の玉座に漆黒の山羊の角を生やした男がいる。魔王だ。
「定命のものがよくあがく。死の山を越えた魔将がいた時点で、こちらは国を堕とすだろう思っていた。だが、同じ人物に二度も阻まれた」
ぎろりとこちらを見る魔王。
「少年、お前のことだ。私は運が悪いらしい。勝負に出た途端そこのアレイアといい、少年といい、英雄が現れる」
間をおいて続けて話そうとする魔王。アレイアさんは既に武器を抜いている。どうどう。
「少年。私のものにならないか。少年が魔将になればいまだかつてないほど強大な魔将になるはずだ。そうしてくれるのならば、お前に世界の半分をくれてやろう」
おお!なんてテンションの上がる質問をしてくるのだろうか。RPGプレイヤー冥利に尽きる。
「答えはノーだ。なぜなら、俺は既に強大で最強だからだ。今から殺す奴の部下になるわけないだろ」
ほっとするクーデリカたちとアレイアさん。そんなに信頼ないかな。まあ、仲間がこんな勧誘を受けていたら緊張もするか。
「残念だ。優秀な人材を今から殺さなければならない。余は非常に憂鬱だ」
「俺を殺せると思っている時点で、手前は負けていんだよ。雑魚のくせに前口上が長い。さっさと殺し合おうぜ」
「余に対してなんたる傲慢よ。その愚かさを死んで後悔するがいい」
「最強の俺様になんたる傲慢よ。その愚かさでさっさと死ね」
ぶちりとナニカが切れる音が確かに聞こえた。ヘイトを買うことに成功っと。
んじゃやりますか。俺が紅玉の剣を抜いた途端、魔法の詠唱が始まった。
「魔法障壁!」
魔法障壁を張る。クーデリカ達はクーデリカが張った魔法障壁の裏にみんなで退避している。
紫色の魔力弾がマシンガンの様に放たれる。すでに魔法障壁を張っているからノーダメージだが、なかなか重厚感のある音になるな。三、二、一、俺は頭の中でカウントをする。魔力弾が尽きると同時に距離を潰す。
術後硬直を狙い打って、頭に横薙ぎを当てた。
「どうした。寝起きに弱いタイプか?」
「不敬だぞ!」
錫杖が振るわれる。パリィを決めて胴を打ち抜く。胴を切られたことを気にせず攻撃をしようとしたが、マリアンヌが大楯で受け止めた。ロイとアレイアさんが攻撃を入れていく。そして一斉に退避すると、クーデリカの天雷が落ちる。
魔王は無視して、魔法詠唱をしようとするが、俺は天雷に割り込んで詠唱している喉に突きを入れた。強制的に詠唱を止めた。
「魔法なんて使う余裕があると思うなよ。遅すぎる」
俺は魔王に愚痴をこぼした。