師匠命令
俺はアレイアを連れて仲間の下に戻った。仲間は武器を構えて待っていたが、俺がジェスチャーで下ろすようにと、静かにとお願いした。女神アレイアが生きていたなんて知ったら、大きな騒動になるだろうからな、アレイア本人にしても混乱することだろう。みんなに紹介することにする。
「こちらはアレイアさんだ。石化して魔将に堕しかけているところだった」
仲間の中に動揺が走った。そりゃあそうだよね。毎食前に信仰をささげていた相手がここにいるんだし。
「それでアレイアさん、こっちの銀髪娘がクーデリカ。魔法使いです。そっちの黒髪の大楯持ちがマリアンヌ。仲間の守りを担っています。そこの男がロイアルク。剣士です。基本的にはロイアルクの動きを参考に攻撃を担ってください」
ロイアルクがバッとこちらを凝視する。仕方ないだろ。アレイアさんどう見ても戦士タイプなんだし。
「わかった。あの剣士に合わせればいいのだな」
「ええ。回避を優先してほどほどに攻撃するようにしてください」
「ほどほどに?それは何故だ」
「敵の攻撃をマリアンヌに集中させるためです。彼女はとても硬い。ちょっとやそっとの攻撃では彼女を傷つけられないし、すごい攻撃でも防げます。彼女を最大限活用するためには必要なことです」
「なるほど。私にもそういった仲間がいれば戦闘が楽になったかもしれない」
そうでしょうとも。
「私の時代人類はゴブリンどもの家畜だったが今の時代はどのような生活をしている?」
「それは……ロイアルク。アレイアさんが聞いているぞ。為政者の立場として教えてあげなさい。師匠命令だ」
「師匠というなといったじゃないですか。ですが、わかりました。……今の人類は」
道中、ロイアルクが人類の生活の説明をする。一般的な家庭の一日の生活を説明している。アレイアさんは時折涙ぐむようにその様を聞いている。涙ぐむアレイアさんを見て、クーデリカたちが涙ぐんでいる。……なんだこの状況。
しばらく歩いていると、巨大で長い通路に出た。松明の火が辺りを照らしている。俺はランタンを仕舞った。
「この先に魔王の部屋がある。気を引き締めていくぞ」
「おう」「「「はい」」」
長い長い赤い絨毯が敷かれた階段の先、大きな大きな赤い門があった。魔王の部屋だ。
「これが最終決戦だ。行くぞ」