DLC?
城内の探索は快適なものだった。本来であれば邪教が召喚したモンスターで満ちているのだが、この世界では邪教信仰はまだ本格化していないし、王国における邪教徒は一掃している。そのうえ教主(仮)は改心している。
俺は城内のある扉の前に来ていた。大きな鉄製の大門だ。ゲーム時代もここは開かずDLCではないかと囁かれていた扉だ。俺はありったけの爆発ポーションを積み上げた。そしてみんなで出来るだけ距離を取って、爆発ポーションをひとつ、山へと投げつけた。爆音が辺りを支配する。大門は完全に破壊とまではいかなかったが、人ひとりが抜けられる程度には開いている。
俺は仲間へ待機を言い渡して、中に入った。できれば装備がいいが、ボスモンスターだった場合撤退するには俺ひとりの方が逃げやすい。
部屋の中に灯りは少ない。ランタンに火をつける。中には血管が張ったような石造りの部屋、部屋の床一面に描かれた紫に輝く魔方陣、中心には石化した人間がいる。近づいて見ると女性らしい。……かっこいい系の美人さんだな。
俺は魔方陣について詳しいわけでもないので、紅玉の剣で魔方陣の一角を削っておく。魔方陣が明滅した。多分機能がなくなったのだろう。後はこの女性か。どうしたものか。どうもこうもないか。最強になる男がもしかして敵かもしれないと女性を無視するわけにはいかない。
俺は竜の血を彼女の全身にぶっかけた。煙が立ち上がり、卵の殻が取れるように彼女の身体から石が取れていく。彼女はしばらく忌々しそうに全身にまとわりつく、石を取り除くと、身体をほぐすように動かした。……戦闘の前準備じゃないよね。
彼女はこちらを向いた。
「礼を言う。私はアレイア。このままでは魔将へと堕していただろう」
「いいえ。どういたしまして俺はレクです」
アレイア?この世界で信仰されている女神様の名前だ。偶然じゃ……ないだろう。開発陣め。ここで信仰されている女神様が魔将となっている姿と戦えると面白いっすねみたいなノリでこの状況をつくったんだろうな。
「少年聞きたいことがある。今の人類はどうなっている」
「貴方のお陰で死の山。……越えられない山の間にできた谷に砦を築いてそこから東に王国と帝国を建国してそこそこ繫栄していますよ」
「そうか。このような子どもが魔王の城に来るものだから、私の時代よりも状況が悪化しているのかと思った。なぜここに子どもがいる」
「この時代、最強の冒険者が俺だからです。魔王を討ちに来ました」
「……最強?それは素晴らしい。これから魔王を討ちに行くつもりだった。同行してもいいか?」
「こちらの指示に従っていただけるのなら」
「……助けてもらった恩義がある。いいだろう」
女神アレイアが仲間になった。彼女も未来において女神と呼ばれていることを知るまい。