加護の使い方④
冒険者ギルドを出て、領主館に向かう。コレントの都市のレベルアップのために、多くの人に技や魔法を覚えてもらうためだ。もしものとき、ファイアボールを打てるだけで逃げられる状況を作りやすくなるだろう。より多くの兵士や冒険者に覚えさせるためには領主のマークス様のお力を借りるのが手っ取り早いだろう。
領主館に着いたら、兵士に挨拶すると、すぐにお目通りがかなった。スピーディーすぎる。
「これはレク殿。今日はどうかされましたか?」
「実はマークス様私は他人に技や魔法を覚えさせる加護があるらしくて、それをこの領の兵士たちや冒険者たちに新しいものを覚えてもらって全体の戦力を増強できないかと考えているのです」
「……なんと……そのような加護……聞いたこともない」
「それは努力やモンスターの討伐に応じて多くを覚えてもらうことができるのです。試しにマークス様、お手を拝借」
マークス様の手を取る。知力型だったのでファイアボールを習得してもらった。
一瞬で魔法の知識を詰め込まれたマークス様ふらついたが、目の中には深淵が一瞬滲んだ。
「このように」
「これは…強大な加護だ」
「自分は直ぐにでも魔王を討伐に行きたいので今日中に終わらせたいのです」
「魔王を…討伐。流石はレク殿だ。常人では考えつかないことをさえ成し遂げようとしている。分かりました。今日中により多くの兵士と冒険者をここに集めるとしましょう」
というわけで、臨時スキルツリー習得会が開かれるようになった。
兵士という兵士が、冒険者という冒険者が列を成している。
さあ、戦力の増強といこうか。
片っ端からスキルツリーを開いて、聞き込みをして、現在の戦闘タイプを強力にするようにした。また、希望をしている技能を覚えさせることもあった。
領主館に着いたのは、まだ朝だったのに夜の帳が降りようとしている。冒険から帰ってきた冒険者たちが噂を聞きつけてやってくる。さあ、もう一仕事だ。
朝になった頃、やっと列を制した。全員に覚えさせることができたのだ。そう思ったら、今度は一般の方たちが列を成していた。まあ、ファイアボール覚えたら逃げられる確率があがるからね。頑張らないとね。
俺は自分にそう言い聞かせた。途中、クーデリカ達が様子を見に来てくれた。出発は明日と宣言して解散してもらった。この作業は俺の能力依存だから手伝うことができない。
俺はほぼ一日半かけてコレントの都市の戦力増強に努めた。