加護の使い方③
俺は清々しい思いで目が覚めた。ほぼほぼ2日間働きづめだったから、よく眠れた。他のメンバーはもう起きているらしい。
俺は天幕を片付けつつ、外に出た。命令を出しているローレン将軍がいた。手を振って注意を引くとこちらに来た。
「これはレク殿。おはようございます。今朝は援軍に来てくださってありがとうございました。サイクロプスやキマイラが多少なれば、対応できたでしょうが、あの数、それに強大なモンスターには対応しきれなかったでしょうな」
「まあ、力になれたのならよかったよ。ところで、俺の仲間たちは?」
「クーデリカ殿とマリアンヌ殿は救護所で怪我人の治療をしているところです。ロイアルク皇子はモンスターの処理を手伝っていただいております」
クーデリカの回復魔法は強力だからな。みんなできることをやっているようだ。なら、俺がやるべきことはあれか。
「ローレン将軍。俺は加護で人の能力を引き出したり、技を覚えさせたりすることができる。この砦にいる人間を全員順番に俺の前に連れてきてくれ。ひとりずつしかできないからな」
「なんとレク殿はそのようなことまで……」
ローレン将軍は何やら唸るような声を出した。しばらくして。
「分かりました。この砦の戦力増強は王国の誰もが望むこと。順次レク殿の下に行くように伝達しておきましょう」
「頼む」
その日の俺は一日中、砦の人間と面談して技を覚えさせたり、能力を身につけさせたりした。これはやっておかないとな。
その夜もアイスビッシュ砦に四人で泊まることになった。俺が天幕とベッドを設置する。
「昨日から、戦い詰めだったわけだが、いい加減モンスターとの戦いにもなれたんじゃないか」
ロイアルクが答える。
「流石に慣れてきました。最初はサイクロプスやキマイラが怖かったですが、いい加減なれました」
「だろうな」
昨日から数えて五十体はたおしているはずだ。それだけ倒せばなれるだろう。
クーデリカが答える。
「わたくしは正直慣れない気持ちはありますが、杖の扱いには慣れてきたように思います」
火力が急に上がって戸惑っただろうな。その分付与や回復も強化されているので全体の強化に貢献しているだろう。
マリアンヌが答える。
「私はようやくタンクという仕事に慣れてきたように思います。今でもヘイトの管理は難しいように感じますが」
難しいよな。ヘイトの管理。俺は自分で殴って、自分にヘイトを向けてカウンターが基本なのでヘイトについてはマリアンヌの方がもう優れていることだろう。
「今日はアイスビッシュ砦に支援に来てくれてありがとう。王国の人間として感謝する」
「いえ、アイスビッシュ砦は人類の全体の最前線として優れている拠点です。その手伝いをするのは当然ですよ。ところでこれからどうするのですか」
「ああ。コレントの都市に向かって、今日やった加護を使った戦力強化をしておきたい。王国の王都でもな。俺の背中を任せられるのはお前たちだけだろうが、俺がいない間、モンスターを対処できる奴が少しでも多く欲しい。そしたら……魔王を討伐にでも出向くかな」
いつまでも防御をしていられない。いい加減こちらが攻めてもいいときだろう。
「魔王を……」
「ああ、魔将に力を与えているのは魔王だ。魔王さえやれば、脅威も減るだろうしな」
「レク。レクがいっていることは人類がいまだ成し遂げたことのない偉業ですよ」
「それくらい当たり前だろう。俺は世界最強になる男なんだからな。いい加減夜も遅い。寝るとするか」