マーテル商会とサリア
保険の状態異常回復ポーションを買うためにマーテル商会に来た。ぽつぽつと俺と同じようにもしもの時に備えてポーションを買いに来ているのか、商人や冒険者たちの姿が見える。
様々なポーション類、この都市では見ない食料品や香辛料などが並べられている。
マーテル商会に来たのは久しぶりだ。レクが幼い頃はここに友達がいたのでよくフレアと一緒に遊びに来ていた。
「あー!レクだ。久しぶり」
受付にいたサリアから声を掛けられた。サリアは青い髪色にぱっちりとした瞳が印象的な俺たちの幼馴染だ。最近は商会の手伝いをしているため疎遠気味であった。
「サリア、久しぶり」
「レク、中級冒険者になったんだってね」
「まあね。サリア、状態異常回復ポーションをひとつくれ」
「はい、毎度。んー?レク、なんか変わった?」
「さすがに歳を重ねればね。大人っぽくなったろ」
最近話していなかったから、俺がうまく話せるか心配だったが、意外といけるもんだ。確かに俺とレクは混じり合っているらしい。
「状態異常回復ポーションは銀貨五枚になります」
「はい。丁度ね。……そういえば、サリア。トマスンさん帰ってきてただろ。今度の行商にはサリアもついていくのか?」
「それがねー。サリアにはまだ早いって断られちゃった。10歳になったら一緒に行商に連れて行ってくれるんだって。他の都市に行けるなんていいでしょー」
「サリアは来月10歳だろ。それに、俺もいずれは他の国に行くような大冒険者になる予定だからな。別にうらやましくないし」
「大冒険者ってレクったら、中級冒険者になってもまだまだ子どもね」
「それで、サリアは来月の黄玉の月が誕生月だろ。いつ行商についていく予定なんだ」
「それがまた別の都市に儲け話があるっていうんで私を行商に連れて行ってくれるのは再来月になるんだって」
「そかそか」
よかった。トマスンさんはあの日別の都市に行商に行ってるんだ。巻き込まれる心配はなさそうだ。
「フレアがサリアと最近話せてないって愚痴ってたぞ。紫の日に休みがあったら孤児院にも顔を出してくれ」
「あら、そのときには中級冒険者様はエスコートしてくれるのかしら」
「俺は忙しいんだ。女同士で楽しんでくれ」
マーテル商会を出た。太陽が真上に登ってきている。いつもよりは遅くなるが。軽くなった財布と武器の練習もある。今からでも妖気の森に行くか。
ハヤブサの指輪を着けて、さらに早歩きで人の間を縫って門から飛び出る。急がなくては狩りをする時間もないだろう。
妖気の森に着くと早速スライムと出くわした。
試しに皮鎧で攻撃を受けてみる。痛いは痛いがちょっとした痛みだ。レク自身のレベルアップと皮鎧の性能で大分防御力が上昇しているらしい。
攻撃後の硬直を翡翠の剣で切り捨てる。こちらもジャスト回避やクリティカル攻撃でないのに一撃だ。―――強くなった。目標達成にはまだまだだが、確かに壁を一つ乗り越えた気分だ。
今日はそのままの勢いで、時間の許す限りスライム、ホーンラビット、ピクシー、ゴブリンを討伐した。
すぐに日が欠けてしまい。帰途へつくこととなったが、レベルが1上昇したし、何より目標だった装備の更新ができた。
これで、妖気の森の深部攻略の目途が立った。
明日の新しい冒険に向けて、改めて気合を入れるのであった。