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謳われるもの

クーデリカ視点


 私たちは魔将の発する闘気に恐れを成して動くことすらできなかった。その間にレクは魔将とともに遠くに行ってしまう。戦わずとも分かった。私たちでは敵になりえない。ただ殺されることだろう。


 私は気を取り直して、レクにいわれたモンスターの相手をすることにした。


「マリアンヌ、敵のヘイトを取ってください!」

「はい」


 マリアンヌは大楯と剣を打ち付けると叫んだ。


「うおおおおおおおおおおお!」


 そこには恥じらいはない。ただただ必死さが滲んでいた。


 私も強化魔法をマリアンヌとロイアルク皇子に付与する。私が違いに気がついたのは、天雷を使ったときだ。天雷は元々一定範囲に雷撃を降らせ続ける魔法だ。つまり、敵が巨大であればあるほど大ダメージが期待できる魔法だ。それがキマイラを一回の魔法で倒した。これが更新した武器の力。防具を更新したマリアンヌ、剣を更新したロイアルク皇子も同じことを感じているのだろうか。


 戦況を俯瞰すると、確かにマリアンヌの防御がより安定しているし、ロイアルク皇子のモンスター討伐のスピードが早くなっている。これはヘイトの管理が大変だ。一体一体丁寧に倒していくこと、マリアンヌの防御付与、回復に注意して戦闘を進めることにした。


 夜も更けた頃には視界を埋め尽くしたように存在したモンスターを討伐することができた。


 防壁から降りてきた兵士たちとも一緒にレクの手助けすることができないかと、レクの下へ向かった。


 そこにあったのは神話の戦いだった。雷が戦場を縦横無尽に駆け巡る。レクは雷を避け続けて、ついには雷を凌駕する速さをもって、敵の攻撃を弾き一撃を入れる。相手の攻撃を丁寧に避け、弾き、盾で受けた。


 割って入ることができなかった。私たちに雷に反応することのできる人間なんているはずがない。それを成し続けるレクは確かに英雄だった。まさに謳われるにふさわしい人間だ。


 最初は戦闘に割って入れないもどかしさを感じていたが、それも自然と霧散した。だってレクと魔将の二人とも笑っている。殺し合いをしながら心底楽しそうに笑っていた。


 敵と仲良さそうに笑いあっているレクには呆れる気持ちと、レクにあんな表情をさせられる魔将が羨ましい気持ちがあった。


 なんにせよ、わたくしたちの出る幕ではないらしい。わたくしたちはただ祈って戦闘を眺めていた。


 朝焼け中、互いを称賛し合いついた決着は美しく見えた。

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