雷魔将
クーデリカたちがギリギリ視界に入る程度の距離を取る。
「こんだけあったら決着を着けるのに十分だろうよ」
「そうなのか?お前が大魔術師とかだったら、視界一面に隕石を降らすこととかをしそうなものだが」
「魔法なんて面倒なものを俺はつかわねえ。使うのはこいつよ」
握りしめた拳をこちらに見せつける魔将。なるほど。肉弾戦がお好みらしい。とはいえ、俺の飛閃のように遠距離を攻撃がないと決めつけるわけにはいかない。あとはアドリブだ。
「俺は遠慮なく剣を使わせてもらうがな」
「おう。全力で来な」
「ああ」
平野で対峙する魔将と俺。風が草を揺らしたのが、戦いの口火となった。パッと光ったかと思うと、距離を潰して殴りかかってきていた。俺は横に回避する。幸いなことにジャストタイミング。ジャスト回避となった。緩やかな時間の中、足を潰そうと剣を振るった。
「甘え!」
緩やかな時でも平時のような速さでバク転による回避すると、蹴りを放ってくる。さらにしゃがんでジャスト回避を発動した。さらに緩やかになってほとんど止まった時の中で胴に一撃を入れようとする。パッと雷がはじけると、敵が距離を取っていた。ダッシュ回避で近づいて追撃を選択。上段に振るった剣を拳でパリィされた。相手の拳が迫る。さらにこちらもパリィで返す。態勢を崩した敵に胴体に一撃を入れた。
一端、こいつから距離を取る。なるほどね。雷魔将といったところだ。パリィやジャスト回避を使いこなすことで戦うことが出来そうだ。
「この俺に一撃入れるなんてやるじゃねえか、レク」
「お前こそ。その速さ、俺が知っている中で最速だな、ディルギン」
ちらりとクーデリカたちを見る。もうあのくらいの敵なら大丈夫そうだな。なら、俺は『パーティー』からクーデリカたちを外して、ソロになった。久々に孤高が発動する。
こいつと戦っていて分かったことがある。こいつはジャスト回避やパリィができなければ戦いにならないタイプの敵だ。そして、なにより戦っていて楽しい敵だ。
俺は戦いに没頭した。
避ける。避ける。避ける。弾く。斬る。受ける。回復する。避ける。避ける。避ける。弾く、斬る。弾く。
敵の攻撃を無心で反射していく。思考はほぼ空白だ。奴と俺の間には拳と剣があれば十分だった。延々と切ったり殴られたりしながら、時間は続く。楽しい。
そうして、朝日が差し込んだところ、ディルギンが倒れた。
「見事だったぜ。レク。そうだ。俺はこうやって死にたかったんだ」
「面白かったぞ、ディルギン。いい戦いだった」
「ああ。熱い戦いだっ―――」
白い粉となって消えるディルギン。辺りを見る。モンスター達は片付いて、クーデリカたちや兵士たちが遠目で見ている。
これはなにかやった方がいいやつだな。俺は剣を高く掲げて勝利を宣言した。