主役とは?
俺は直ぐに壁の華と化した。
「ひとりでほとんどのモンスターを倒してしまったらしい」「それは帝王も言っていたが本当なのか?人間にできることじゃないだろう」「だが、それを成したから称賛されているのだ」「私は恐ろしい。聞くところによれば、帝国騎士団も初日に壊滅させてしまったらしい」「強靭なことで有名な騎士団を!?」「化け物じゃないか」
噂が独り歩きしてなんかすごいことになっているらしい。別に壊滅させてないですよ。ただ手合わせをしただけで。
仕方ないので食事を取って、仲間の様子を見る。
クーデリカとマリアンヌは男性に口説かれているらしい。まあ二人とも美少女、美女だもんな。
ロイアルクは元々ここがホームだ。色々な人から挨拶を受けている。
え……祝宴の主役が誰だって?知らないです。
そうやってやけ食いをしていると、帝王ダルトンが話しかけてきた。
「帝国の人間も存外胆力がないと見える。この時代恐らく貴殿ほどの英傑はおらぬというのに関係を結ぼうとせぬとはな」
「まあ、俺がもっと幼いときに今の俺みたいな人間にあったら恐れると思いますから、仕方がないことですよ」
つい最近までスライム相手に苦戦していたからね。
そりゃサイクロプスやキマイラを片っ端から殺しまくった人間がいたら怖い。
「ところで紅玉殿は良い人はいるのかな?」
「ええ。います。五人ほど。あと紅玉ではなくレクとお呼びください」
「5人……レク殿はまだ九歳なのだよな?多くはないか」
「出会った人が魅力的すぎただけですよ」
帝王ダルトンは珍しいものを見る目をした。
「英雄色を好むをこの目で見たのは初めてかもしれぬ」
「この程度の戦果で英雄と呼ばれるのもこそばゆいですがね」
「この偉業をこの程度とは、レク殿がいう戦果とはどのようなものを指すのか?」
「魔将、魔王の討伐を成したものですね。モンスターは時間と被害が出ても倒せないことはない。けれど魔将と魔王は別格だ。幾百幾千人いようとも、強い魔将に、魔王には勝つことができないでしょう」
「狂魔女と巨魔将を討ち果たした英雄のいう言葉は中々怖いことを言う」
「でも事実です」
帝王ダルトンは改めて、こちらを見た。真剣な瞳だ。
「それで王国の英雄殿はどうして帝国に来たのかな?」
「帝国に魔将の兆しを感じたからです。俺は人類を勝利させたい。こんなところで帝国に倒れられたら大変です」
「魔将……つまりレク殿は先日のモンスターの襲来も」
「十中八九魔将が関連しているでしょうね。本来モンスターは集団行動をとりません。上位者が命じたとしか思えません」
「つまりは気が抜けぬということだな」
「ええ」
果実水を呷る。帝王ダルトンと危機感が共有できたのは良いことだろう。