加護の使い方
「おっと君は技量に秀でた才能を持っているようだ。短剣か弓かがあっていると思うよ。どっちがいいかな?短剣か。分かった。私の手を握って。そう、呼吸を楽にして、短剣の技を覚えられたね。それじゃあ頑張ってね」
人人人、人の列がすさまじい。どういう喧伝の仕方をすればこんなに集まるんだ。というか明らかにさっきの奴とか魔法の素養がなかったじゃないか。
いろいろ言いたいことがある。けれど隣で申し訳なさそうに列整理を手伝ってくれているスーリアさんに文句をいうことはできなかった。というか、これは俺が思いついてもよかったな。レベル1の奴でも千人ぐらいいれば都市を守れたかもしれない。これは王国に帰ってもやっておくことにしよう。
「君は、精神系の魔法使いだね。うんうん。魔法が使えない?そんなことはない。今まで使っていた魔法が君に合ってないだけなんだ。その証拠を見せてあげよう。手を出して。これで精神波を打てるようになった。あとで演習場に行って、自分は確かに魔法使いなんだってことを確認してね」
人の列は途切れない。
「君は筋力に優れているね。自分が小柄だから自信がない?そんなことはない。才能と体格は全くの別だよ。この世界では。ほら、剣の攻撃技を覚えさせるから後で演習場で打ってごらん。びっくりするくらい威力がでるから」
とりあえず午前はさばききった。
昼食をとりながら俺は一応スーリアさんに愚痴る。
「スーリアさん、聞いてないですよ。こんな大規模なことになるとは」
「ええ、申し訳ありません。最初は挫折した魔法使い志望の方にだけ声を掛けていたのですが、素質をみてもらえるということになって気がついたらこの規模になっていました」
「どうしますか。どうみても午後でも終わりませんよ」
「……どうしましょう」
「いいのであれば、一夜を徹してこの作業に従事しますが……」
「ここで帰ってもらったら、暴動が起きかねませんよね。お願いできますか」
「はい」
まあ、乗り掛かった舟だ。やれることはやっておこう。
俺は一晩中観てもらいに来る人の対応をした。
終わったころには朝日が昇り始めていた。スーリアさんは意外と元気だ。どうしてかって聞くと研究で徹夜は慣れているらしい。なれるべきものじゃないと思うけど。
俺は重い体を引きづって、城の風呂に入ると。ベッドで横になった。やっと寝られる。