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三題噺もどき2

平日休

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくじゅうはち。

 


 アラームが鳴ろうとした瞬間、スマホに手を置く。画面の下の方を、指でするりと横になぞる。 毎度、こう、アラームが鳴る前に起きて止めるなら、かける必要もなさそうだが。しかし、ないのはないで不安になるので、こうして懲りずに飽きずに、アラームが鳴る瞬間に止めるという日々を繰り返している。

「……」

 デジタルの数字は、六と零2つ。まぁ、見なくともいつもこの時間なので分かってい入るのだが。

 しかし今日は何曜日だったか…。それは確認しないと分からない。

 仕事柄、平日休みが当たり前なせいか、曜日感覚が少々ズレるのだ。

「……」

 これは、自分だけかもしれないが。

 仕事をするようになる前までの、土日祝が休みという感覚は、こう、いくつになっても抜けない。休日イコール土曜か日曜と思っていると、水曜日だったり月曜日だったりする。未だなれないこの感覚のせいで、もうすべての曜日感覚がズレまくっている。

 ―その上、同居人が毎日家にいるせいで、更にズレるのだ。

「……」

 今日…は……火曜日か。

 さて、今日は休みか仕事か。

 休みだった気がするのだが、念の為スケジュールを確認しよう。この目で見ないとどうも確信が持てない。不安なまま二度寝なんてできない。

「……」

 手に持っていたスマホを、更に顔の前に引き寄せ、管理アプリを開く。……ん、やはり休みのようだ。特に予定も入っていない。

 あぁ、しかしそろそろ冷蔵庫の中身の補充をしなければ、食糧難になりかねない。

 何せ、一人の予定が、二人分の食事を三食賄うことになっているものだから、想定よりも減りが早いのだ。

「……」

 二度寝でもするかと思っていたが、ならば起きて午前中のうちに色々と済ませてしまおう。掃除もしたいところではあるし。

 ―ついでに、コイツを散髪にでも連れて行こう。このもじゃもじゃ。

「……」

 自称ニートの、コイツ。金はあるとか言って転がり込んできたのだ。まぁ、実際金はあるのか食費なんかは出してくる。光熱費は自分が出しているが。

 ただ、見目には無頓着なのか、言わなければ髪は伸ばしっぱなしなのだ。切れというのに…。

「……」

 それで、その同居人は、寒かったのか自分の腹のあたりに丸くなって寝ていた。

 布団は別のはずなのだが。寒くて潜り込んできたのだろう。

 猫か何かか、こいつは。

「……ん…」

「……」

 毛布を持ち上げたせいで、冷気が入ってきたのか、更に小さく丸くなる。

 …可愛いなんて思っちゃいないが。ホントに猫そのものだなぁ。

「……」

 そろりと、その布団から抜け出す。別に起こしてもいいのだが。

 もう一度、その同居人の上に適当に毛布を掛けキッチンへと向かう。

 コーヒーでも飲むことにしよう。

「……」

 ケトルに、水をいれ、スイッチを入れる。

 コーヒーの粉末をマグカップに適当に放り込む。

 次いで、まだお湯が沸くまで時間はあるので、窓に向かいカーテンを開く。

 ついでに窓も。

「……」

 からからと言う古臭い音と共に、ぶわりと、冷たい風が入り込む。

 窓の近くにある、小さな棚の上に置いてあった煙草を手に取り、ベランダにでる。

「……」

 以前は室内で吸っていたのだが。

 転がり込んできたアイツが、喫煙は周りにもよくないんだなんだとごねたのだ。家主でもない癖に。やめればいいのにとまで言い出した。体に良くないとか、早死にしてほしくないだとか、なんかそんなことまで言い出して。終いには涙目になり始めたので、こちらが折れたのだ。

「……」

 やめることは出来ていないが、少し本数は減らしている。多分。

 正直まぁ、遅いとは思っているが。

「……」

 日が昇り始めた空に、ふっと息を吐く。

 白く昇る煙はやけにゆっくりと名残惜しそうに消えていった。

 後は、煙草の香りだけが残る。

「……」

 遠くの方で、踏切の音がした。

 さて、始発から何本目の電車だろうか。

 学生の頃は、このくらいの時間には電車に揺られていたなぁ。

「……ん?」

 なんて、らしくもなく感傷もどきに浸っていると。

 くん―と、裾のあたりを引かれた。

 何かと後ろを振り向くと、布団ダルマがそこに居て。

「…おゆ、わいた…」

 なんだ、自分のココアも淹れろと?



 お題:喫煙・踏切・自称

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