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傀儡の博奕打ち 〜天才ギャンブラーと女戦士によるギャングの壊滅〜  作者: 闇柳不幽
(零または肆)最愛の友人
138/146

5-2.42番

 私は目の前で座る42番の手札を見た。そして、やるべきことを教えてやる。


「先ずはHCPを数えるんだ」

「何だそれ」

「エースとアナーを点数にするんだよ。アナーってのは絵札のことな。Aが四点、Kが三点、Qが二点でJが一点」

「・・・数えた」

「何点だ」

「言っていいのか」

「ミニブリッジだから言っていい」

「十六点」


 SのこいつのパートナーであるNは十三点、オポネントのEとWがそれぞれ八点と三点、全部足したらぴったり四十点だ。間違いないな。


「二十九点対十一点だからお前らがオフェンスだ。そんでNよりお前の方が高いからお前がディクレアラーな」

「何でNは手札を全部見せちゃうんだ」

「ダミーっていうのはそういうもんだから。今回、Nはプレーに参加しない。お前が全部決めることになる」

「え、私、初心者なのに」

「お前達のHCPが二十五点以上で、ダミーの手札と合わせてスペードが八枚以上あるな。コントラクトは4♠︎だ」

「何それ」

「スペードが最強ルールで、四メイク、つまり十トリック以上取ったら勝ちってことだよ」

「トリック?」

「皆の手札、十三枚だろ。だから第一トリックから第十三トリックまでやるんだ。それで十勝以上ってこと」

「十三戦で十勝かよ。厳しいな」

「余裕だよ。今回のお前の手札、特殊だからな。オープニングリードはディクレアラーの左隣からだ。いいよ、始めて」


 42番の左隣であるWが♢4を出した。ということはWはダイヤが長いのかな、シングルトンの可能性もあるが。


「ダミーの番だ。ダミーが何を出すかはお前が決める」

「何を出せばいいんだ」

「ダイヤなら何でもいい」

「じゃあ、♢9」


 Nが42番の代わりに♢9を出した。それに続いてEが♢Kを出す。


「お前の番だ」

「4、9、Kか。これ、どうすんだ」

「ラッキーだったな。お前はダイヤが枯渇してる。この場合は好きなのを出していい」

「えー、そう言われてもなあ」

「最強のスペードを出しちまえばいいんだよ。この♠︎2を出せ」

「ああ、成る程ね。スペードの次に強いのはどれだ」

「いや、スペードが切り札なだけで残りは同じだ。トリックが終わったから♠︎2を裏返して自分の前に並べて。勝ったら縦、負けたら横だ」

「次は」

「勝った人、お前からだ」

「何を出せばいいの」

「何でもいい。ただ、スペードがお前のとダミーので八枚、今出したので九枚だ。てことはオポネントは四枚持っている。このとき一番可能性が高いのは一枚三枚の二枚差だ。奇数枚のときは一枚差だから覚えておけ」

「ん、どういうこと」

「EかWのどっちかが三枚持ってると仮定しろってこと。お前とダミーがスペードで三回勝てば、オポネントからスペードがなくなる。残ったスペードは勝ち確定ってことだ」

「おお、成る程な」

「六トリック確定だから、残りの四トリックはテキトーに強いカードで取れ」

「テキトーって、テキトーだな」

「じゃあ、後は皆に教えてもらって。これでいいな。お前の電話の順番貰うよ」

「え、待ってよ。あの、コントラクトってヤツはどうやって決めるんだ」

「えーっと、HCPが二十四点以下ならパーシャル、二十五点以上ならゲーム、そんで同一スーツが八枚以上あったらスーツコントラクト、なかったらノートランプだ」

「専門用語が多いな」

「パーシャルは1NT、1♠︎、1♡、1♢、1♣︎、ゲームは3NT、4♠︎、4♡、5♢、5♣︎だ。数字に六を足したトリック数を取れ」

「そもそもノートランプって何だよ」

「お前、今、♠︎2で勝ったろ。これはスペードが切り札だから勝てたんだ。切り札じゃなかったら♢Kが勝ってた」

「ああ、そういうこと」

「点数計算は皆にしてもらいな。じゃあね」


 私は42番の肩を叩いて卓から離れた。壁際の電話に向かう。その際、看守所と囚人舎を繋ぐ通路の扉の前を通るのだが、その扉が開いた。十四番だ。十四番が懲罰房から戻って来た。私はピンと背筋を伸ばして歩く十四番に話し掛けた。


「随分早かったな。寂しかったか」

「ん、そうだな」

「ちゃんと反省したか」

「私はな」


 そう言って十四番は私達の房に向かった。あいつ、疲れてないのかな。懲罰房は精神的にキツいって聞いたことがあるのだが。


 私は十四番の背中を見送って受話器を取った。旦那の番号に掛ける。子供のことが心配だ。


(終)

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