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傀儡の博奕打ち 〜天才ギャンブラーと女戦士によるギャングの壊滅〜  作者: 闇柳不幽
(零または肆)最愛の友人
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4-1.遊びのクラップス

 そろそろナチュラル、特に7のナチュラルが来そうだな。となると、パスに三万いっちゃおうかな。


 僕はクリップに一万両札を三枚挟み、パス枠に置いた。来てくれよ、7。


 僕の隣の起投役が二つの賽子を投げた。そして、目が確定した賽子を賽出しが卓の中央に寄せる。


「11です」


 目の合計は11、ナチュラル。7ではなかったが勝ちは勝ちだ。三万両儲けた。


 賽出しが沢山の紙幣を手に精算をし出した。ここでは木札などを一切使わずダイレクトに現金を扱うので、自分は博打をしているな、という感覚を強く持てる。


 僕に起投役が回ってきた。賽出しが俺の前に六個の賽子を置き、僕が選んだ二個以外を戻す。


「賽は片手で扱ってください」


 今パスで勝ったばかりだから、もう一度パスでいこう。僕は再び三万両を賭け、賽子を振った。


「6です」


 賽出しはそう言って賽子を卓の中央に寄せる。


 この卓のクラップスでは特殊ルールが適用されていて、それゆえ卓のプレイス枠が通常と異なる。6と8にバツ印が書かれているのだ。これはここに賭けることはできないことを意味する。つまり、6と8はポイントナンバーになれないのだ。振り直し。


 とはいえ、6と8に全く意味がない訳ではない。ビッグ6かビッグ8に賭けた場合は重要な目になる。だが、控除率を考えると得ではないとカイライが言っていた。


 僕は賽子を拾い、再び振った。4だ、ポイントナンバーになれる4。賽出しがプレイス枠の4の所に木標を置いた。


 僕はもちろんオッズ賭けをする。しない訳がない。先程儲けた分の三万両を、クリップで留めた札の手前側に置いた。さあ、6、7、8の前に来てくれよ、4。


 フィールド賭けやイレブン賭けの精算をするために、賽出しが卓の下から紙幣を持ってきたが、今回は卓の札を回収するだけだったので、持ってきた紙幣が使われることはなかった。その紙幣を片付け、賽出しが賽子を拾う。決投だ。決投は賽出しが振る。


 賽子が振られた。目は2、振り直し。次の目は確定後に賽出しが卓の中央に寄せてから宣言された。


「4です」

「よっしゃ」


 僕はつい声を出してしまった。しかし、それも無理はないだろう。だって、超不利な勝負に勝ったのだもの。賽子を三十六回振って6、7、8は十六回も出てくる一方で4はたったの三回だ。雲泥の差。よく勝ったよ。


 えーっと、パス賭けとオッズ賭けで儲けはそれぞれ三万、十六万、で、計十九万だ。一回の勝負で十九万も勝ったのだ。凄いぞ。大儲けだ。今日はトータルで三十四万マイナスなので、これでマイナスが十五万になった。よし、取り戻せそうだ。


 賽出しが俺に十九枚の万札を投げ渡した。十九枚の厚み、嬉しい。次も十九万勝とう。そうすればトータルでプラスになる。


 ポイントナンバーで勝ったので起投役は回らない。また僕がやる。その前にパス賭けだ、三万両。そして、賽子を振る。


「3です」


 くそ、クラップスか。無条件で僕の負けだ。三万もドブに捨てちまった、くそ。悔しい。


 起投役が隣の客に移った。残念だ。いけると思ったのに。


「9です」


 あ、悔しがっていたら起投が終わってしまった。この卓ではカム賭けが禁止されているので、次の起投まで待つしかない。いや、でも、待ちたくない。損を承知でプレイス賭けするか。では、4、5、9、10のどれかを選ばないといけないが、普通に選ぶとしたら勝つ可能性の高い5と9のどちらかだな。ただ三対一でぼられてはいるのだが、まあ、いいだろう。そうだな、5にするか。


「プレイス賭けで5」


 僕は賽出しに三万を渡した。6、7、8が出る前に5が出たら十二万儲かる。頼むぞ。


 賽出しが賽子を振った。一つは1、もう一つは6、そして、中央に寄る。目は7だ。僕の三万があっさり溶けた。ああ、何をしている、くそ。


 ポイントナンバーが負けたため起投役が回る。僕は負け分を取り戻さないといけないのに順調に負けているではないか。次こそ勝たないと。


 僕は今度は五万両をパス枠に置いた。起投。目は5、ポイントナンバーが5となり、決投に移る。どうするか、オッズ賭けするか。


 他の客の様子を見てみた。すると、皆、強気でかなりの額をオッズ賭けしている。これ、合計すると百万を越えているのではないか。今日一の大勝負だ。くそ、僕だって遅れを取って堪るか。僕は六万両を五万両の手前側に置いた。


 精算を終えた賽出しがそれぞれの手で一つずつ賽子を拾う。親指と人差し指で挟んで賽子同士を接触させた。僕から見て右が1、左が6だ。賽出しはそこから二つの賽子が鏡合わせになる様に回転させ、右2、左5にした。今度は縦に回転し、右3、左4。片手で二つ賽子の接触面を上下から挟んでもう片方の手で二つ賽子を同時に百八十度水平回転し、右4、左3。縦回転で右5、左2。鏡合わせ回転で右6、左1。


 僕は別に疑ってないのだが、賽出しは賽子を改めた。僕も見ていて異常は感じない。普通の賽子だ。そして、賽出しが振った。


「6です」


 もういいや。終わり終わり。大損こいた。はい、お終いです。帰りましょう。


 僕は片付けを始めた。金を財布に戻す。実は今日の博打に使った金は僕の物ではない。カイライから提供された物だ。だから、どれだけ負けてもいいのだが、負けること自体は悔しい。しかし、今日の僕のミッションは賽出しの動きを逐一記憶することであり、勝つことではない。全部を完璧に記憶できてはないが、大体は何となくふわっと記憶できている節があるのでそれでいい。


 僕は席を立った。このゲームのこと、カイライに報告しに行こう。


(終)

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