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傀儡の博奕打ち 〜天才ギャンブラーと女戦士によるギャングの壊滅〜  作者: 闇柳不幽
(零または肆)最愛の友人
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2-9.傷の男、誕生

 外の空気は冷えていた。温度としては少し肌寒いくらいだ。先程まで閉じられた空間に居ただけに外の空気は清々しく感じられる。


「遊んでいかない?」


 道に立っていた女が急に俺に話し掛けてきた。な、何だ。俺はよく分からないので無視して歩いた。


「ちょっとー」

「ハーイ」


 次々と話し掛けられる。ああ、そうか、働いているのか。俺は目線を下げ、できるだけ存在感を消して歩く。


「ねえねえ」

「お兄さーん」

「おい、カイライ」

「今暇でしょー」


 あれ、何か、今・・・。気のせいかな。


 そのとき、肩を掴まれ、引っ張られた。その引っ張った人物を確認すると、メーガだ。こいつ、何をしているのだ。勝負が終った直後に会うのは不味いだろ。会ったことがバレたら関係を疑われる。そのことに考えが及ばないのか。


 メーガは俺の背中を押し、路地に押し込んだ。何の用なのだ。俺はメーガに正対して聞いた。


「何だ」

「お前、ふざけんなよ」


 メーガは怒っている様だった。


「タマホクに疑われてんじゃねえかよ、私が」


 俺は呆れた。それを言いにわざわざ来たのか。自信満々にいつも通り接せば疑われないのに。俺はメーガを安心させることにした。


「大丈夫だ。お宅を疑っても証拠は出ない」

「でもタマホクは私に部屋出ろっつったんだぞ。凄え疑ってんだろ」

「お宅は今日何もしてない。その疑いも直ぐに晴れる」

「疑いが掛かってる時点でヤバいだろ」

「疑わしきは罰せず、だ」

「じゃあそれを私の代わりに中ゼミの連中に言ってくれよ」


 メーガの声が低くなった。俺は嫌な予感がし出す。この嫌な予感、説得で回避できないだろうか。


「待て、落ち着け。俺を脅すのなら店の中ですべきだ。誰も見てない所で俺と敵対していることをアピールしても意味がない」

「店だと椅子があんだろうが。椅子でガードされると面倒なんだよ」


 あ。


 突然、顔面に衝撃が走った。その勢いで俺は建物の壁にもたれ掛かったのだが、今度は腹に衝撃が。い、息、立っていれない。俺は倒れ込んだ。次々と蹴りが入る。俺は丸まるしかなかった。


 蹴りが止んだ。しかし、それで終わりではなかった。俺の胸倉が掴まれ、上体を引き起こされる。そこで俺が見たのは、ナイフを構えたメーガが歯を食い縛っている姿だった。こ、こいつ、マジか。


 メーガがナイフを俺の頬に突き刺した。俺は心臓が潰れる思いだ。か、貫通して、やば、殺される。


 俺は必死でメーガの腕を掴んだが、メーガは俺の抵抗を物ともせずナイフを引いた。ああ、くそ、切り裂かれているのが分かる。細かく何かが千切れていっている。声を出さないと耐えれない。


 胸を蹴られ、地面に叩き付けられた。かなりの血だ。俺は頬の傷を手で押さえた。


「可哀想だから百万は持って行かせてやるよ」


 メーガは俺を見下ろし、ナイフに付いた血をハンカチで拭った。


「私の報酬はタマホクから護身代として巻き上げるから安心しな。もう二度と来んなよ、ここら辺には。また私の前に現れたいか。ナイフってよく切れんのが分かっただろ。賢明な判断をしろよな。じゃあな」


 そう言ってメーガは何事もなかったかの様に去って行った、俺は血塗れになっているというのに。


「・・・」


 俺は立ち上がった。傷はまだ痛いし、スースーする。くそ、何でこうなるのだ。全く納得できない。顔を切られてたったの百万かよ、くそ。だが、暴力を前に俺は無力だ。見極めれなかった俺がいけないのだ。そう思おう。くそ、無法者が。何でもありかよ。これをされたら俺はどうすればいいのだ。


 血塗れの顔で通りを歩く訳にもいかない。俺は路地を進んだ。


 東か・・・。東に行ってもいいのかもしれない。この傷、綺麗には治らないのだろうな。


(終)

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