黒
まるで全ての絵具を混ぜてカンバスに撒き散らしたような黒い空に、陰鬱とした私の心は際限なく沈み込む。
ふと気がつくと、ぽつぽつと雨が降り始めたと思えば止んで、また降ってを繰り返す気まぐれな空模様。
その繊細な雨はしとしとと私の肩を濡らしていく。
「こんにちは」
誰かに声をかけられた。答える必要などない。
「こんにちは」
また話しかけられた。なんてことはない。無視すればいい。
「こんにちは」
うるさいなぁ、もう話しかけないでくれよ。
そんな言葉は出るはずもなく、私はただ俯くだけだ。
「こんにちは」
四回目だ、全て同じ声だった。知らない声だ、いったいなんの用事だというのか。
私は恐る恐る顔を上げた。
私の瞳に映ったのは紛れもなく「私」だった。
上から下まで同じ格好だ。気持ち悪いことに、顔までそっくりそのまま同じだ。
しかしながら、こんなにニコニコした顔で陽気に話しかけてくるのは少なくとも「私」ではないと思う。
「お前は誰だ?」
私はそう尋ねる。すると相手は
「ほんとだ、こんなにそっくりなんだ...」
目の前の「私」はまじまじと私を見つめている。
私は気味がわるくなった。
不安になりポケットに手を突っ込むと硬いものが手に当たる。
冷たい...これは、ナイフだ。私はそう直感した。
そこからは早かった。
心臓の鼓動が響き渡り、全身が脈打つ。
気がつくと、私は1人になっていた。
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どんよりと暗い空はまるで対照的な私の心を光らせるように真っ暗だ。
さて、今日は何をしようか。