守りの一族に伝わる記録
その昔。その郷には異形のモノが跋扈し、人々はその脅威に脅かされていた。
度重なる異形の脅威に郷は混沌としており、郷を治める一族に生まれた若き当主は頭を悩ませる。
そんな折、天啓を受けたのはやはり一族に生まれた娘だった。
『郷に壁と塚を築くこと、さすれば神の力が及びやすくなる。異形の悪しき手からも護られよう……』
年老いた父親に代わり長の地位に着いたばかりの若き当主は、神の声を聴く才を得た姉の言葉に従い郷に白き壁と赤き塚を築く。
すると瞬く間に異形の脅威は静まり、これを喜んだ当主はこの先も神の言葉に導かれ郷をよく治めたいと姉に神々との橋渡しを頼んだ。
姉はこれに従って巫女としてヒトと神との間に立ち、神の声を人々に伝えた。
郷に迫る異形のモノは神気を帯びた白き壁に行く手を阻まれ、赤き塚に封じられ次々と浄化されていった。
最後に残った異形を退治るに要した時間は数ヶ月とも数年とも云われ、四柱の神がそれぞれ一枚、合わせて四枚の鏡を用いて郷を蛮力で蹂躙し続けた異形は四つに分断され封じられた。
その力の余波が飛び散ったことにより郷は真っ二つに引き裂かれ、赤塚を築いた半分は消失し、白壁に囲われた半分が残った。
郷の領土を半分に失いながらも異形を退治た四柱の兄弟神に深く感謝した若き郷長は四神を祀る社を築く。最後の異形を封じた四枚の鏡は幾重にも結界を施され、四つの社にひっそりと封印された。
四つの社を祀る神社はいつしか『四鏡神社』と呼ばれることとなり、神の声を聴く巫女と神の導きに応じた郷長を輩出した一族は『守りの一族』として神社を守り続ける役目を担った。
領土の半分を失った郷は、激戦の名残のように残った白い壁から、後年『白壁』の町と名を変えることになる。
<守りの一族に伝わる記録より>