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第十五話 天変地異


 白仙は体を揺すられて目を覚ます。

 ぼやける視界の先にはアルギとミユウの姿。

 どうやら逃走したことがバレて探しに来たとかそんなところだろうと考えていたのもつかの間、ミユウの手を引かれ、立ち上がる。


「白仙さん。大丈夫かい?」


 ミユウが顔を覗き込み優しい口調で聞いてくる。


「たわけ。体を見れば無事かどうかなどすぐにわかろうて」

「それはそうだけど念のためにね。とりあえず危険だから城に一度戻ってもらうよ」

「はぁ。危険だと? ここが?」

「それは帰りながら説明する。とりあえずミユウの馬に乗ってくれ」


 アルギが部下への指示の合間に白仙にも指示を出す。


「というわけだから…。お願いできるかな?」


 白仙を迎えに来たアルギの一行の人数はざっと数えて十三人。

 うち、一人は城で会ったフェルムの姿も見受けられた。白仙は心の中で「あの髪は特徴的じゃな」と一言つぶやいた。

 それから長いこと走ったすえ、白仙はあることに気が付く。


「ミユウよ」

「なんだい?」

「ここは…。どこじゃ?」


 一度城からダンジョンまでしっかりと走ってきたはず。

 道を忘れるということはないと思っていた。


「そういうのも無理はない。これは第一級災害だからな」


 突然、すぐ横を走っていたアルギがその質問に答える。


「災害じゃと?」

「うん。学識名では天変地異とか大地転変って呼ばれる災害で、約一時間ごとにこの世界の座標が大きく狂うんだ」

「座標が?」

「そう。例えばバルトスが北六十度。東百七十度だとすると、一時間後にはこの数字が乱数のようにズレてしまうんだ」

「つまりは?」

「簡潔に言えば、すべての場所が変化するといったところだ」


 アルギが目線をずらさずにただ淡々と言葉を連ねる。

 その様子に白仙は違和感を感じていたがそれも地面の揺れでかき消される。


「残り時間。予想より早まりそうです!」


 先頭の方にいた兵士が大きな声で叫ぶ。

 その声に周りの空気が一変する。


「隊長。残りの距離から考えて無理があります。予定では明日で転変は終わると推測されています。止まった方がいいかと」

「……」


 ミユウの言葉にアルギは馬を走らせながら顔を下に向ける。


「隊長、どうしたんですか!」


 刻一刻を争う中で隊長が黙り込む。集団的行動時に中心人物が機能しなくなることほど危険なことはないだろう。

 そして時は止まることなく進み続け、地震の間隔も短くなっていき、馬の脚もだんだんと遅くなり始める。


「全体! 止まれ!」


 周りがその声のする方を一斉に向ける。

 その先にいたのはミユウの馬の上に乗り、ミユウに抱きかかえられた謎の少女であった。


「隊長がこんな様子であるならばほかに誰かが指揮を執らねばならんだろう?」

「行動力がすごいですよ白仙さん」


 体を後ろにそらせ、白仙は下からミユウの顔を覗き込み、にやっとする。

 アルギは今もなお魂が抜けたように俯いたままだが、馬の方が賢かったようで足を止め、ミユウの馬のすぐ近くへ歩み寄ってきた。

 合わせてほかの兵を乗せた馬も続々と近寄って一つの塊のようになり、転変を待つ状態となった。


「今思えばおぬしらに起こされた場所もダンジョンではなかったな」

「ええ。ほんとに賭けでしたよ。白仙さんが逃走してどれくらい経ったかも分からないですし、どこへ行ったのかすら不明。そこらへんはフェルムに感謝してください。彼女のおかげで見つけれましたから」

「誰も探してくれ。などと頼んだ覚えはなか。でもフェルムや。感謝申す」


 突然の感謝に馬を撫でていたフェルムの体が一瞬、上に上がる。


「い、いや。たまたまだから。偶然よ偶然。あははは…」


 と、顔を赤く染めつつ、右手を左右に振る。

 その時。


「まずい。予定と全然違う! 来るぞ!」


 ミユウの声に共鳴するかのように地面が波打ち始める。

 上下だけでなく左右にも。荒れ狂う大海原のように、からもそれに合わせて揺られる。

 中には揺れよって気分を悪くしたのか吐く人間も現れた。

 続くこと十五分弱。

 次第に揺れは小さくなり、地面の動きもなくなった。

 周囲は木々に囲まれたいわゆる陸上ダンジョン。


「どうやら収まったようだね。あと、君も収まったかい?」

「ずびばぜん…。酔いやすっ! うえっ、ううえぇぇぇぇぇぇぇ……」

「と、とりあえず彼は安静にしといてあげよう。それはそうと最悪だね、ダンジョン内部に移動させられるなんて」

「ひとまず、(わて)に指揮はまかせてもろうてええか?」

「うん。僕は馬を近場で休ませてくるよ」


 大地転変が収まっているかどうかが危ういというミユウの助言のもと、近場の安全を確保しつつ、周囲に見張りを各四方に二名ずつの八人体制で備える。という作戦が白仙によってたてられた。


「さても、そこの吐いておる奴は近場に寝かせておれ。あと、二人は近場の木を切り倒せるかの?」

「木? ですか?」

「そうじゃ。視野確保と木材調達。この中に火を付けれるもの持った輩はおるかえ?」

「それは僕が付けるよ。これでも五色適性はそれなりにあるからね」

「ごしょくまほう・・・?」

「よ、予想通り・・・。それはまた今度説明するよ」

「ほうか。ありがとう」


 その後、木々を手早く切り倒し、得た枝からミユウの火魔法によってただの木片から焚き木になり、焚き火をキャンプ地の中心部に設置した。

 そして焚き火のすぐ側に未だ気分を悪くしたままの男、放心状態のアルギを放り投げる。

 二人の表情はなぜか揃って青ざめていた。



遅れてしまいごめんなさい!

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