episode1 秩序 前編
光が存在すれば闇もうまれる。
人は光を敬い、闇を恐れる。
人は闇を取り除くべく、希望を求めた。
ひとつの希望は、闇を葬る戦士となり、
人々の希望となった。
一章、開始
「ここらへんか⋯。」
男が立ち止まり、辺りを見回す。
男がたっている場所は公園。遊具がいくつかあり、砂場には、遊ばれた形跡が残っている。
子供たちの気配はない夕暮れの時間。
象の形をした滑り台の向かって左側に立ち、右ポケットからジッポーライターを取り出す。
火をつけて、滑り台にかざすと、黒い霧のようなのが現れてきた。
「ビンゴか。」
男はその黒い霧の中に、ライターを持った右手を突っ込んだ。
するとだんだん黒い霧が薄れていった。
十秒ほどで完全に消えて、霧の中に入れた手が見えるようになった。
「ふぅ、これで一安心。」
ジッポライターをポケットにしまい、ため息をつくと、携帯電話が鳴った。
「はい?」
『もしもしぃ?おつおつ〜。』
声の主は女の声だった。
「これで全部でしょ?」
『そうだよ〜(ボリボリ)。今日の晩ご飯はなに〜(ザクザク)。もーお腹すいた〜、しぬぅ。』
電話越しから何か食べている音が聞こえた。おそらくスナック菓子だろう。
「なんで俺が作んなきゃいけないの?仕事してるのは俺の方よ?てか、マスターは?」
『マスターはバイトで〜す。』
「店長なのにほかの店に行って自分の店開けっぱって⋯。」
『そうそれは今に始まったことじゃないしね。』
「まぁいいや、もう帰るわ。じゃあな。」
ピッ。と電話を切った。
「あぁー⋯(ため息)。つかれたぁぁぁもぉぉん⋯。」
両手を上に伸ばしながら、公園を出た。
カランカラン
陽気な鐘の音が、ドアを開閉時に鳴る。昔ながらの古風な感じのある喫茶店の中。
「ただいまぁ⋯って、誰もいない。」
店内は人一人もいない。
それもそのはず、この店は夕暮れ時はほとんど人が来ない。それどころか、最近はあまり人がこなくて経営困難になりかけている。
「はぁ⋯。」
ため息をついて、カウンター席に座る。
スマホを取り出し、反対ポケットからジッポーライターをカウンターに置く。
スマホを片手に、ジッポーライターの蓋を開けたり閉めたりをしている。
「明日はぁ⋯曇りか。二十二度か。」
季節は秋。九月下旬。
「そういえば、明日は倫理学だったっけ⋯。課題とかなんもなかったよなぁ。一応確認しとこ。」
その時。
ガタン!
カウンター奥の壁が回転ドアのように回った。
「ねーなんで帰ってきたのに食事を作らないのかなぁ。」
気だるそうに現れたのは、先程の電話で話していた女。
「楓さん。ちょっとはここでも何か動いたらどうです?」
「ちゃんとサポートしてるんですけどぉ。なに?バイト代も出さないくせして、まだなにかしろと?アイドルやってる方がまだマシなんだけど。」
凄い顔されて怒られた。
「すみませんでしたね。ブラックで。」
彼女の名前は四ツ谷 楓。
十七歳の最近人気になったアイドル。テレビだけでなく、ネット配信なんかでも見るようになっている。今イチオシのアイドル⋯なのだが⋯⋯。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛⋯だりぃー。」
カウンターに寄っかかって、スナック菓子を食べていた。
「今イチオシのアイドルの日常がこれだと知ったら、もっと人気になっちゃうな。」
嫌味のように言うと、すごい目つきで睨んできた。
「ぅっ⋯。何でもないです。」
「あ、そうだ。ゼーレは?」
「あぁ、はいはい。じゃあよろしく。」
そう言ってジッポーライターを渡した。
「んー、今回もかなり使ったね。下手したら雄斗消えちゃうからね。」
「分かってるよ。」
「ただいまぁ〜って、おぉ!?みんなお揃いかな!?」
店のドアを開けたのはマスター。
「おやっさん遅いよぉ。てか、ここのマスターが他の店でバイトってさ、どうなの?」
立ち上がり、呆れたような顔で言う。
「いやーだってさ、ここあんまり人来ないじゃん。だから、近くの人が来る喫茶店でいろんなものを見て学んでるわけよ。そんでいつか、こちらも取り入れようと⋯!」
「まぁ好きにやってよ。俺は飯作るよ。」
「おう!よろしくね!」
「よろー!」
マスターと同じタイミングで楓も言った。
楓がスマホをいじり出すと、眉間に皺を寄せ、画面を見た。
「⋯ん?殺人犯逃亡⋯?この近くじゃん⋯こわ。」
ボソッと呟いた程度の声で言った。
食事が終わり、皆が寝付く深夜。一時半頃。
雄斗は喫茶店(彼からしたら家であるところ)から出た。
ジッポーライターを右手に、スマホを左手に持ちながら暗い道を歩いていく。
「気配がこのあたりか。」
スマホのマップを確認しながら歩いていると、たどり着いた所は夕方訪れた公園だった。
「まだいたのか。」
ゆっくり、周りを見て警戒しながら歩く。
するとどこからがうめき声がする。
人間のような、しかしよく聞くと人間ではない他の動物のような曖昧な声。
ゆっくりとゆっくりと、息を殺して進む雄斗。
公園の端まで進みきり、草の茂みに右手を前に持ってくる。ジッポーライターのフタを開け、火をつける。
炎の色は、朱色のような赤色、もしくはオレンジがかった赤色ではなく、真っ赤。完全な赤色だった。
その炎はメラメラと燃え、茂みを照らす。
その時、草むらから黒く、ゴツゴツした手が右腕を掴んだ。
茂みの方へ引っ張ろうとする腕を、雄斗は右腕を自分の胸に近づけ、左肘で三回ほど上から下へむかって殴った。
腕から手が離れて、後ろへよろめいた。
ジッポーライターのフタを閉じ、軽く中腰にして構える。
茂みから黒い何かが上へ飛び出てきた。
それは見るからに化け物としか言いようがないモノだった。
皮と骨しかないような身体。長い手に、長い脚。目は白目で、全身黒く、電灯の光で少し黒光りしていた。
「ゥンン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァ!!!!!!!」
人間が想像する鬼のような声で叫ぶ。その見た目から鬼といっても正解なのだろう。
とにかく人が触れてはならない存在であることが一目瞭然だった。
雄斗が戦う構えになり、化け物は睨む。
次の瞬間、化け物は雄斗に飛びかかった。
雄斗はジッポーライターのフタを瞬時に開け、炎をつけた。
スライディングして、化け物の腹部に入り、手を伸ばしてジッポーライターの炎を着けた。
すると化け物は苦しそうに当てられた部分を抑え、もがいた。
雄斗は立ち上がり、ジッポーライターの炎をもう一度点火させ、力を込めるようにジッポーライターを握る。
すると炎はみるみると強くなり、次第に五十、六十センチくらいになり、その炎は真っ直ぐに燃えていた。炎の中心から、剣のように鋭い刃が形成され、炎をまとう、炎でできた剣が作られた。
構えて、様子を見ていた。
化け物は立ち上がって、雄斗の方を見て、叫ぶ。吼える。怒りのような声が公園内に響きわたる。
そして助走をつけて飛びかかってくる。
それを時計回りに回転して受け流し下から上へ剣を切り上げた。
その一撃は致命傷、否、それで決着がついた。
化け物の切られた部分は炎と同じ赤い色に光り、徐々に光が強くなって最期に化け物の身体は破裂した。
ジッポーライターの炎は次第に弱くなり、剣が消えていった。
通常の強さの炎になったところでフタを閉めた。
「すぅー⋯はァァァ!!!」
大きく深呼吸をした。
「これで、終わりっとぉ!」
雄斗は公園を出て、喫茶店に帰っていった。
「明日一限からだよぉ⋯早く帰って寝なくちゃ⋯!」
小さな独り言を言いながらヘトヘトな感じで歩いていた。
どうも。あとがきを使ってしょうもないことや解説をしていきます。
まずはこの度、貴重なお時間を使い、読んでいただきありがとうございます。これから時間の合間を使って作れたらいいなと思っています。
さて、今回から書く作品は、ダークな感じで、ヒーローが主人公という作品を作ってみたく作りました。後は文章力向上という目的もありますが、そこのところは置いといて、軽く解説していきます。
主人公は赤羽雄斗。大学二年生の文学部。ごく一般的な青年という役になります。イメージは、身長一七三センチ、体重五十九キロ。私服はジャケットやワイシャツ、結構カジュアルな服も着たりします。髪型は眉にかからない程度のショートで黒色です。
今回はもう二人いまして、その一人は四ツ谷楓です。普段はダラダラだけど、その正体はJKアイドル、カエデなのだった!?まぁそれの話しはいつか出ます。高校一年生の身長は一六一センチ、体重は秘密。髪型はミディアムより少し長くした感じの黒。ファッションはかなりこだわるタイプです。
そして、その父の四ツ谷鳴海。年齢は四十六歳で、マスターやおやっさんと呼ばれています。喫茶店をやっているがあまり客が来ないので、アルバイトをしています。この人は後ほど詳しく解説します。
ひとつのエピソード考えるのや作るの大変なので基本前編後編と分けます。
今回はこの辺で筆を置かせていただきます。なんかてきとうですいません。もうちょっと慣れるよう頑張ります。よければこれからよろしくお願いします。