2話 鍛冶と家事
嬉しそうな両親らしき人達が顔を覗かせている。
(俺生まれたんだな…やっぱり声がでない)
ここで郁太はとある事に気づく
(隣に誰かいる?双子なのか?棒がない!女になってんの?!サタアのいたずらか?!
…嗚呼、前世の息子よ使ってあげれなくってごめんな)
森山 郁太は第二の人生を送り始めて11年目になる。
郁太は都市部から離れた村で生まれ、名はアヲハとなずけられ、双子の妹もできた名はアヲメ。
アヲハは前世を反省し色々やってみていた。
まず外に出ることから初めて、村の鍛冶屋によく顔を出して鍛冶の知識を得ていき
身なりを整え、村の子と遊んで親密度を上げて。
この時点で前世より良くなったっと感じるアヲハだった。
だが魔法はまだ使えない、学校に通い始めてやっと使える。
ちなみに学校に行き始める歳は12歳からで、郁太が元居た世界よりだいぶ遅い世界だった。
アヲハはいつも通りアヲメと鍛冶屋の所に向かっていた
「「おはよう」」
鍛冶屋の戸を開けながら顔を出すと
「また来たんか!物好きやなぁ」
鍛冶屋のクロシが笑顔で迎えてくれる。
クロシは親の友達でよく家に来ていて、よく赤ん坊の頃のアヲハ達の世話をしていた。
アヲハはクロシが鍛冶屋と知り、4歳から毎日欠かさず鍛冶屋に顔を出しに来ていた。
そこで鍛冶の知識を得て、そして手伝いもさせてくれるようになった。
「そろそろ休憩にすっか!」
クロシが声をかけると、アヲハとアヲメはリビングでお茶を煎れ始める。
クロシが汗をタオルで拭きながらリビングに来て椅子に座り
アヲハ達も煎れたお茶をクロシに渡し椅子に座った。
クロシがお茶をすすりながら聞いてきた。
「おめぇら、毎日来てるけど友達おらんのか?」
アヲハとアヲメは呆れた顔をして「「いるに決まってんでしょ」」と口をそろえて言う。
「そっか、ならよがった。でもおめぇらよう飽きんな?オラなんか子供の頃は、
鍛冶なんかつまんなくって、よう外に遊び行ったぞ?」
アヲハはまだ呆れ顔でクロシに
「いつか自分で丹精込めて育てて武器や防具が立派な姿にさせる為だよ」
「変な言い回しするなぁ。アヲメも一緒か?」
「アヲメは違うよ?アヲ姉が行くって言うからだよ」
「おめぇは素直なやっちゃなぁ!」クロシがアヲメの頭をわしゃわしゃっと雑に撫でながら言う。
アヲメはクロシの手をどかして「女の子は髪が命なんだよ!」と頬を膨らませてる
「そうなんか?アヲハ」クロシが問いかけると「別に?」アヲハは素っ頓狂な顔で言う。
「アヲ姉は女子ぽくないんだよ!」アヲメは怒りながら言うが
「そう言ってアヲメは料理や掃除、裁縫とか出来ないじゃん」
「そのうち出来るよ」
「そのうちねぇ…」アヲハは目を細くしてアヲメを見る。
「まぁまぁ…じゃそろそろ作業に戻るか」
お昼時になりアヲハ達は家に帰り、お昼ご飯の用意をし始めた。
両親はいない、仕事の都合で遠い所に住んでいる。だからアヲハが家事をしている。
「アヲメご飯何がいい?」そう問いかけると
「なんでもいい」即答だった。
アヲメは困った顔をして何があるか、氷入れる冷蔵庫を確認する。
すると芋と挽き肉しかなかった。
アヲハは二つの食材を手にして、作り始める。
「アヲメ、そろそろ出来るからお皿とパン用意しといて」
アヲメはしぶしぶ用意する。
リビングのテーブルに料理が並べられ、二人は席に着き
「「いただきます」」
「アヲ姉この料理は?」
「芋を挽き肉で包んだ物をトマトスープに入れた創作料理よ」
アヲメは味気ない反応で返した。
「「ご馳走様でした」」
「アヲ姉、美味しかったよ。片付けやっとくよ」
アヲメはそう言って片付け始めた。
「ありがとうね、散歩に行ってくるね」
アヲハは家から出て村に向かった
散歩していると、見慣れない少女が誰かを探してる様子だった。
「どうしたの?」アヲハが聞いた。
「いたぁ!」少女はそう言ってアヲハの腕を掴み人の目に着かない所に連れてった。
「儂を覚えとるか?」少女は特徴的な一人称を使いアヲハに問う。
「儂って…サタア?」アヲハがサタアに気付くと、
「儂の姿が変わって無いのじゃから気付かんかい!」サタアは微笑みながら言う。
アヲハは混乱していた。それは仕方ないだろう、神様が目の前にいるのだから
「なぜここにいるの?」アヲハの質問にサタアは真顔で答える。
「暇になったからじゃが?」
アヲハはそれでは納得する訳もなく、説明を求めた。
「儂は元から暇な時は下界に遊びに行くのじゃぞ?滅多に可哀想な奴もこんし、
えらい神様の気分次第で働く量が変わるのじゃ。
お主を飛ばした後は大変じゃった、
今えらい神様が長期休暇じゃからその資金集めに人を多く送って来たのじゃろう」
アヲハはサタアの話を聞いて鳩が豆鉄砲を食ったようだった。
「歩合制なんだ…神様ってお金使うんですか?」アヲハが聞くと
「こうやって下界に来たらお金を使うんじゃ。」
「神の世界ってどんな感じなの?」アヲハは質問を続けた
「神の世界って下界の企業と変わらん、色んな世界があって、世界が違えば担当の神も違うんじゃ。」
「こっちで言うと、色んな世界が店舗でその担当の神様が店長や社員さんって感じかな」
「そんな感じじゃな」
サタアは次々とアヲハが驚く事を言い続ける。
「神様というのは【様々な経験】をして、何より人々の信頼を築けて来たかが
神様になる第一条件じゃ。そして死ぬ時にえらい神様の目に止まり
試験に合格したらなれるのじゃ。じゃから神様というのは沢山おるのじゃ。」
アヲハはある事に気が付いた。
「サタア様?そんなこと簡単に言っていいんですか?」
「問題ないぞ?そうでもしないと、神様の世代交代が出来んじゃないか」
それもそうかと納得するアヲハだった。
もうすでに日が傾いていた
「もう帰らないと」アヲメが心配してると思いアヲハは帰ろうとする。
「うむ、儂は当分は暇じゃからこれで呼ぶと良い、これに念じれば儂に伝わる」
サタアはそう言ってしずく型のネックレスを渡した。
「ありがとう、また会おうね」
アヲハは家に帰っていった。
「アヲ姉、遅かったどこ散歩しに行ってたの?」
アヲメは心配してくれていた。
「ちょっと、そこら辺」そう言ってアヲハは誤魔化した。
アヲハは帰って気付いた。
(女になったのに、私と気付けたんだろう?)