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老人
亭「千両 かたじけない事ではござりますが
実はこれは描きました絵師と約束いたしまして
今度私がやってくるまで売ることはならんぞと言われまして
もう一度あの絵描きさんが来るまで
お売りするわけにはまいりません」
殿「さようか しからばその絵師が参ったならば
必ず城中へ届けでるように」
千両の値が付いたというので また候
噂は広まりまして近郷近在はもちろん
よその土地からもやってまいります
壱「相部屋でも何でも結構でな その雀
朝日に当たって飛ぶところが見たいので
なんとかお部屋をとってもらえませんかな」
亭「それがどの部屋も ぎーっしりでなあ
今日はまた廊下にまでお客さんが布団をしいて
寝るとおっしゃってございますので」
弐「どっか 空いているところはおまへんか」
壱「階段やったら空いてるやろ」
弐「階段に腰かけて朝まで待つとか」
参「私も」
亭「もう今日は階段まで満員になるとわ」
便所に泊まるわけにはいかないが
次から次へと客が来る
甲「宿屋はこちらでございますか」
乙「宿屋はこちらで」
丙「雀のお宿はどこじゃ」
舌きり雀みたいな騒ぎになって
宿屋はおかげで大繁盛でございます
ある日の事六十を越えた年輩の上品な老人
老「許せ 一晩厄介になりたいが」




