殿
亭「なんじゃい 部屋の中に雀かなんか暴れてるがな
誰が閉め込んだんや どうもならんがな
その辺糞だらけにされてるに違いないわ」
障子を開けますと 五羽の雀が乱れ飛んでます
亭「あれ 仰山の雀やな」
廊下の方へ飛び出してくると 開け放った雨戸から外へ出て
朝日に当たって暫くチィチィチィチィと鳴いたかと思うと
一羽がすう―と部屋に戻るとみんな続いてパタパタパタパタと
ハット見たら衝立に納まってしもうた
亭主はびっくり仰天
亭「おおい おおい」
女「まあ あんた どないしたんやいな」
亭「す す す す す す 雀が 」
女「何やて 衝立の絵の雀が抜け出て あほな事言いなさんな
まあ 朝日がカンカンと照った良いお天気やのに
何を寝ぼけた事を言うてるねん」
亭「いや ほんまや 雀が 」
女「とうとう 頭がおかしくなってしもうたか この人」
二階へ上がって衝立を見ても
べつに変わったことはありません
女「何も飛び出したりしてへんから」
亭「お前 そんなこと言うのやったら
明日の朝 二階へ上がって雨戸をあけてみ」
おかみさんは次の日 二階へ上がって 雨戸を開けると
朝日がさっーと射し込むと チチチチチチ バタバタバタバタ
女「あんた すすすすすす 雀が」
亭「同じになりやがった」
女「あーあーあーあー あんたこらえらいこっちゃ」
亭「それ見てみい 嘘やなかろう
言うたとおりになったやろ」
さて これがえらい評判になってこの宿屋に行って
一ぺんその雀を見てこようという客が増えて
もうえらい繁盛
お城の殿様が評判を聞いて
一度その雀を見たいとやってまいりました 衝立をみて
殿「ウーン これは稀代の名作 千両にて買い上げてつかわそう」




