第二章2 本当
俺、鷲崎奏太はごくごく普通の高校二年生だ。ある日を境に日常とやらが大きく変わっていった。
椎名璃那に出会ってから………俺の日常は変わっていく。
無駄にかっこつけ、引かれ、挙句の果てには勢いで、嫌われたいという願いから作戦を立ててしまう。
作戦には成功したのだが一つ恐ろしいことが分かった。家が隣だったのだ。
高校二年生活3日目の夜 特殊能力を手に入れた。
「未来視」だった。一日先のことが見えるようになったのだ。
━━━━━夢の中━━━━
「こ、ここは?」
謎だ。謎だ。俺は椎名の家の中にいた。夢の中でも意識がある俺は(は???この夢って確か…明日の出来事だよな?ってことは、ええええええええええ明日俺になにがおきるんだよぉぉぉぉぉぉ。)この契約の特徴として、状況や、初期設定は変えられない。何か椎名との接触イベントなどなら避けられる。例えば家を出る時間、歩く道とかだな。したがって今この状況は変えられないのだ。俺は明日、何かの事情があって椎名の家へ行く。(ままぁ、きっと、おすそ分け程度だとは思うけど、制服だし、家の中にいるし………)俺は放心状態になった。あそこまで嫌いになった奴の家に行くとかありえないし…そんなことを考えていると目が覚めた。
いつもと変わらないいつもの俺だった。何もかも普段通りに行動し、いつものように学校へ向かった。
(特にはまだ、椎名の家に行くなんてイベントはないな。さぁこれからどんなことがおるのやら。)すこしワクワクしていた。1時間目、2時間目、3時間目、4時間目、時間はどんどん過ぎてゆく。(学校内ではやはり、そんな重要イベントは起きないか。)一人納得していた。昼休憩中、俺はいつものように、屋上へ行こうとした。(はっ、いつも通りにしたら、イベントにぶつかるかもしれない。)そう思い、俺は校庭にあるベンチに座って食べることにした。周りを見渡すと、リア充共が座って食べていた。(爆発させるぞ?)ちょっと気を抜けばやってしまいそうなくらいの衝動だった。
風が気持ちよかった。屋上とはまた違う雰囲気だった。俺は教室に戻った。すぐに異変に気付いた。椎名が机に顔を伏せていたのだ。俺は寝ているだけだと思い放っておいた。
五時間目に差し掛かかった。俺はなぜ椎名の家にいくのかずっと考えていた。
「おい鷲崎 おい 聞こえてるか? 鷲崎ぃぃぃ」
先生が怒声を上げた。
「は、はい。」
俺は慌てて返事をした。
「もういい。廊下に行け。」
かなり怒っていたため俺は静かに教室を出て廊下に立った。それから数分後教室のドアが開いた。
先生かと思い俺は背筋を伸ばすと、そこから出てきたのは椎名だった。
顔色がとても悪かった。いかにも体調が悪いような雰囲気だった。俺は目の前に視線を戻した瞬間
「バタン」
低く鈍い音がした。音のした方向に視線を向けると、そこには倒れた椎名がいた。周りにはだれもいなく全クラス授業中だったこともあり気づいているのは俺だけだった。見て見ぬふりもできず、俺は本能のままに動いた。
「おい。大丈夫か?立てるか?おぶってやるから。」
椎名はゆっくりと体を起こし、俺の背中にのった。俺は感触を確かめゆっくりと腰を上げた。保健室は二階下なのでかなり重労働だ。思考が働いていない俺は階段をゆっくり降りていた。振動を与えずに降りていた。一階降りた時点でかなりきつかった。内心(俺、椎名のこと嫌いだから、ここに置いていこっかな?)など、悪い考えをたくさんしていたが、プライドというものが働き、そのようなことが出来なかった。
保健室に着き、保健の先生に訳を話した。俺が保健室を出ようとしたとき、
「わ……し………わし……ざ…き………………くん…………」
と、椎名に言われた。俺はすぐに椎名の寝ているベットの所へ行った。すると、椎名が
「帰りに………ここ、よって……………」
そう言ってきた。保健の先生も賛同していた。
「そうだね。荷物とかあるし、こんなかわいい子と一緒に帰れるチャンスなんてもうないよ?」
俺は愛想笑いをして、保健室を出た。教室前の廊下に戻ると、先生が恐ろしく怒っていた。後ろには殺気を表していそうな、オーラまで放っていた。
「おい。鷲崎ぃぃぃぃぃぃぃぃ。お前どこ行ってたんだよぉぉ。反省してんのか?トイレっていう言い訳は効かないぞ。」
俺は数秒後口を開いた。
「あ、椎名がそこで倒れてたので、保健室へ運んでました。あ、何か問題でもありました?」
先生は俺の言ったことが信用できなかったのか、教師同士で通話ができる携帯を取り出し、恐らく保健室へ電話を掛けた。数分して
「それは、怒ってすまなかった。もう教室へ戻っていいぞ。」
俺はそう言われ、教室へ戻った。ちょうど五時間目が終わる時間だった。 チャイムが鳴った。俺は椎名の鞄に机の上の荷物を入れた。周りの視線はえげつなかったが、悪いことはしていないので生き生きとしていた。
六時間目も終わり、ホームルームが始まった。
「んー今日話すことは特に何もないかな。じゃーみんな。明日も気を付けて学校にこいよ。さよならー」
うちのホームルームは本当に短い。隣のクラスは、普段から、十分ほどかかっている。俺は椎名との約束を思い出し、すぐに保健室へ向かった。
「お、鷲崎君。ちゃんと来てくれたね。えらい。」
椎名は後ろのベットで帰りの用意をしていた。
「椎名ちゃん大丈夫?」
「す…少しは…楽に…なりまし…た。」
みるからにあまり体調は良くない。すこし無理してベットから立ち上がった。
「じゃあ気を付けてね!」
保健の先生は俺と椎名の帰宅を温かく見守った。歩くスピードは非常に遅かった。俺は椎名に合わせて歩いていた。もちろん、椎名の荷物は俺が持っている。重たい。校門をでて、少ししたあたりで椎名が止まった。
「大丈夫か?」
そういうと小さな声で
「お…おん………おんぶして。」
甘えた声で言ってきた。その可愛さには荷物の重さはおろか今までの椎名への感情はすべて吹き飛びさらには俺の思考完全停止状態に陥った。俺はまもなく椎名の前にしゃがみこんだ。上から椎名の重さが来た。荷物二個と椎名の重さは尋常ではなかったがあの顔を思い出すとやる気しかわいてこなかった。
俺はすたすた歩いた。椎名は起きているのかわからないが俺の肩をつかんでいる手が痛かった。
いつもの四分の三倍速で歩いていた。数分して椎名の家、俺の家に着いた。俺は椎名の家のインターホンを鳴らした。まもなく
「はい。どちらさまでしょうか?」
恐らく椎名のお母さんが対応してくれた。俺は
「あ、隣の鷲崎です。えーと、あ、あの、椎名さんが学校で体調を崩してしまったので、一緒に帰ってきました。」
「あ、あらま。ありがとうね。今行きますから、少し待っててくださいね。」
すると間もなくドアが開いた。椎名をお母さんに渡すと、手招きをしてきたので、俺は椎名の家の中に向かった。
「お邪魔します。」
そういって椎名の家の中に入った。ぱっと見たところ、段ボールが多く積まれていた。それは引っ越してすぐだったから片付いていないのだろう。と思った。俺はリビングに招かれ、椎名の母が、お茶を出してくれた。
「今日は本当にありがとうね。璃那はね、意外と甘えん坊なところがあるから。気遣ってあげてね」
俺は軽く会釈をし、お茶をすすった。はっと、俺の脳内に一つの記憶が割り込んだきた。それは昨日の夢の内容だ。俺は椎名の家にいる。本当に正夢になっている。俺は驚きを隠せなかった。そして少し怖くもなった。ひとまず、
「じゃ、じゃあ、僕はこれで帰りますね。璃那さんもそちらのほうが楽ですよね。」
そう言って椎名の家を出た。
「本当に未来視が出来た。これはいつまで続くんだ。明日は何が起こるのかな。わくわく。」
俺はいつになく上機嫌だった。